<らくご最前線>伝統の継承 新看板・五代目金馬

2020年10月23日 07時24分
 九十一歳にして今なお現役の四代目三遊亭金馬(さんゆうていきんば)が名跡を実子の三遊亭金時(きんとき)に譲って二代目三遊亭金翁(きんおう)を名乗り、金時が五代目三遊亭金馬を襲名する。その披露興行の大初日・九月二十一日、東京・上野の鈴本演芸場に足を運んだ。
 襲名披露は昼の部。新型コロナ感染拡大防止のため半数以下に抑えた定員は十二時十五分の開演とともに満席となった。
 桃月庵白酒(とうげつあんはくしゅ)や三遊亭円歌(えんか)、浮世節の立花家橘之助(たちばなやきつのすけ)といった寄席の人気者が次々に登場する番組がお祝いムードの中でにぎやかに進行していき、柳亭市馬(りゅうていいちば)がこの季節にふさわしく「目黒のさんま」を演じて仲入りとなる。
 再び幕が開いて、襲名披露口上。まずは司会進行を務める落語協会副会長の林家正蔵(はやしやしょうぞう)が、三代目以来の金馬代々との縁を交えてあいさつした後、落語協会相談役の柳家権太楼(やなぎやごんたろう)、最高顧問の鈴々舎馬風(れいれいしゃばふう)、そして会長の市馬が大名跡の継承を祝う。
 通常、襲名の当事者は終始無言だが、金翁は五代目の師匠としての口上を述べ、「生きている限り落語は続けます」と力強く宣言。馬風の音頭で三本締めとなった。
 後半、権太楼の「代書屋(だいしょや)」に続いて高座に登場した金翁は、一昨年に脳梗塞で倒れた後のリハビリについて明るく語る漫談で笑いを呼ぶ。その話術はまだまだ健在だ。
 トリの金馬は得意ネタの「厩(うまや)火事」。けんかするほど仲がいい夫婦の機微を描く名作落語を正攻法で演じて聴き手を引き込む。小手先の笑いではなく、落語の奥深さを巧みに表現する演者だ。「新しい金馬」として力強く寄席の世界を引っ張っていってくれるだろう。
 「落語の力を信じている」という五代目、それを頼もしく見守る金翁。伝統の継承が、また新たな看板を生んだ。都内の寄席を回る披露興行は十一月の国立演芸場まで続く。
 (広瀬和生=落語評論家)

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