習氏の発展構想 深センは香港にはなれぬ

2020年10月24日 07時33分
 中国は香港、マカオと広東省を一体的に経済発展させる「大湾区構想」を明らかにした。民主化抑圧への抵抗が続く香港を取り込み、その代わりに深センを発展の中核にする狙いが透けて見える。
 習近平国家主席は今月中旬、広東省深セン市の経済特区成立四十年を祝う式典で「大湾区構想」について「重要な発展戦略であり、深センが大湾区の重要なけん引役だ」と述べた。
 大湾区構想は、香港を国際金融、マカオをリゾート、深センを技術革新、広州を商業貿易の拠点と位置づけ、二〇三五年までに世界一流の湾岸経済圏を建設するというものだ。
 確かに、習氏が「けん引役」と言う深センは特区になって以降、改革開放政策の最前線として発展を遂げ、一九年の域内総生産は二・七兆元と香港を上回っている。
 だが、深センの発展の速度や規模が目覚ましいからといって、東アジアの経済拠点だった香港とは、国際的な信頼度が違い過ぎる。
 香港が国際金融都市として輝いてきたのは、「一国二制度」の下で法治が貫かれ、ビジネスなどのルールの透明性や公平性があったことが根本にある。
 その香港で国家安全維持法(国安法)を施行し、金の卵の価値を自ら傷つけたのは、ほかならぬ中国である。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)などが最近公表した香港の日系企業向けアンケートでは、約67%の企業が国安法を「懸念している」と回答。拠点としての香港の活用については、34%の企業が撤退や縮小など「見直す」と回答した。
 中国共産党は九月、香港やマカオの実業家など民間人にも党の政治思想を徹底的に学習させるよう担当部門に指示した。
 習氏は式典で、香港やマカオの若者を大陸に招き、教育や就職を通じ「祖国への求心力を高める」と述べた。民主化要求デモの中核となってきた香港の若者の思想教育にも踏み込む発言といえる。
 香港の林鄭月娥行政長官は地元メディアのインタビューで「香港の経済回復は中国本土との統合なしには成し遂げられない」と述べた。
 だが、実は香港と本土との政治的な「統合」こそが、「大湾区構想」の本音であるといえる。
 習政権は、抑圧で自由な香港が衰退しても、深センがあると考えているのかもしれない。だが、民主なき深センがいかに繁栄しようとも、第二の香港にはなりえない。

関連キーワード


おすすめ情報