子どもの一瞬 人形に 岩槻の博物館特別展で32点 平田郷陽、野口光彦に焦点

2020年10月25日 07時43分

人形の細部を熱心に鑑賞する人たち  =さいたま市の岩槻人形博物館で

 さいたま市岩槻人形博物館(同市岩槻区)で、特別展「こどものかたち−創作人形の力展」が開催されている。昭和初期まで美術ジャンルとして扱われなかった人形を芸術品に高めた二人の作家を軸に、子どもの生き生きとした一瞬の表情や動きをとらえた名品三十二点が人気を呼んでいる。十一月二十三日まで。 (前田朋子)
 今年二月に開館した同館初の特別展は、人間国宝だった平田郷陽(ごうよう)(二代目、一九〇三〜八一年)と、人間国宝候補に推されながら辞退した野口光彦(一八九六〜一九七七年)の創作人形を中心に展開する。

「泣く子」はわずか18・5センチの大きさ

 平田郷陽は、江戸期に見せ物小屋などで公開された等身大で人間そっくりの「生人形(いきにんぎょう)」を制作する家に生まれ、二代目を継いだ。培った技術は創作人形に生かされ、「泣く子」(一九三六年)では、舌や指の曲げ方などで精緻な表現を惜しげもなく披露している。

郷陽の「抱擁」(部分、1966年)は自身に孫が生まれた年の作品

 年を重ねるごとに作品の抽象・単純化が進むが、同館学芸員の蟹沢真弓さんは「あり得ない姿勢や手足の長さも違和感なく見せてしまうのは、やはり生人形での技が生かされています」と解説する。眠る赤子に母親が思わず口づける瞬間を切り取った「抱擁」(一九六六年)は、技巧だけでなく温かい視線ものぞく。

野口光彦の「童心戯笛」(1956年)は後ろ姿も見ることができる(作品はいずれも岩槻人形博物館提供)

 野口光彦は「白い肌、三頭身」がお決まりで、技術的には江戸期で完成して伸びしろがないと考えられていた「御所人形」に躍動感を与えた立役者。胡粉(ごふん)を塗り重ねることで生まれる「白い肌」を確かな技術で実現した上に、豊かな表情や動きを時にユーモラスに表現した。「童心戯笛(どうしんぎてき)」(一九五六年)は、むっちりとした肉付きや足の投げ出し方に、幼児のかわいらしさがあふれ出る同館所蔵の逸品だ。
 ほかに二人の弟子など、ゆかりある四人の作品も紹介。鑑賞に訪れた同市見沼区の福井朋子さん(81)は「かわいらしさが印象的で、よくこんな人形が作れたと感心した。くまなく見たいのでまた来る」と話した。蟹沢さんは「さまざまな表情にパワーをもらったとの感想をいただいている。当時の子どものかわいらしさを楽しんでいただければ」と話している。
 午前九時〜午後五時。一般五百円、高校・大学生と六十五歳以上は二百五十円、小中学生は百五十円。十一月二十三日以外の月曜休館。十月二十五日と十一月三日、同二十一日は午後一時半から学芸員によるスライドトークもある。

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