【動画あり】安い物価、税…豊かな土壌求め多様な人々流入 <2020年米大統領選・南部異変(下)>

2020年10月26日 05時50分
 タレント代理人のヘイデン・スペースさん(28)は、起業家で映画製作者のジェシカ・ハウエルさん(36)とともに約2カ月前、ニューヨークからジョージア州アトランタに引っ越してきた。新型コロナウイルスの感染拡大で、大学にアーティストらを紹介する仕事が行き詰まり、アパートの家賃も値上がりしたためだ。(ジョージア州で、岩田仲弘、写真も)

◆「手頃な生活費」、NYからアトランタへ

ヘイデン・スペースさん(右)とジェシカ・ハウエルさん=アトランタで

 「アトランタを選んだのは、映画など娯楽産業が充実し、手頃な生活費で事業を拡大できると思ったから」とスペースさん。ハウエルさんは「(共和党が強い)赤い州なので医療保険が心配だったけど、挑戦する価値はあると思った」。市内に借りた一軒家は緑に囲まれ、ニューヨークのアパートよりはるかに広く家賃は半額。2人とも「とても満足している」という。
 実際、ジョージア州は「南部のハリウッド」と呼ばれるほど映画産業が急成長している。最大30%税額控除する優遇措置で企業を積極的に誘致。カード決済など金融とITを融合したフィンテック産業の集積地としても発展している。
 2人ともトランプ大統領には「科学や人権を尊重しない」と批判的だ。今回の大統領選は民主党のバイデン前副大統領に郵便投票し、「州が(民主党が強い)青い州に変わる一助になれば」と意欲を示す。

◆黒人社会でもミレニアル世代の流入

エリック・ゴードンさん=アトランタで

 こうした進歩的なミレニアル世代(2000年以降に成人した世代)の流入は黒人社会にも見られる。起業家、コンサルタント、大学教授などさまざまな肩書を持つエリック・ゴードンさん(40)はカリフォルニア州出身。アトランタの大学に入学して以来、街がすっかり気に入り住み着いた。「街が多様性とインクルージョン(包摂)を体現しているから」というゴードンさんが特に強調するのが「土壌」だ。
 多くの南部の黒人が人種差別から逃れるために1920年ごろから70年にかけて北部に移住したが、「ニューヨークやシカゴなど北部の大都市には、黒人が成功する政治的、社会的インフラが整っていないことを実感した」と指摘。「われわれの世代が南部に戻ってくるのは、もともと黒人が多く安心感があり、物価や税金が安いなど、そこに成功できる豊かな土壌があるからだ」という。

◆経済成長が政治的な変化呼ぶ

 米国勢調査局によると、州の人口構成は約40年間で多様化が進み、2018年の知事選では、初の黒人女性知事を目指し、ゴードンさんも支援した民主党のステイシー・エイブラムス氏(46)が当選者に得票率1.2ポイント差まで迫る接戦を演じた。同氏はバイデン氏の副大統領候補にも名前が挙がった。

ジョージア工科大と州、市が協力して開発を進める「テック・スクエア」=アトランタで

 ジョージア大のチャールズ・ブロック教授(政治学)は「経済成長が、異なった価値観や多様性を伴った政治的な変化をもたらしている」と指摘する。
 保守的な共和党政権が、自分たちを必ずしも支持しない進歩的なミレニアル世代を招き入れるという皮肉な現象。ブロック氏によると、同様の傾向はフロリダ、テキサスの両州でも見られるという。いずれも今、トランプ、バイデン両氏が激しく競い合っている。

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