12月、初のプラズマ着火へ 長時間維持の技術確立 目指す 那珂核融合研 実験装置を取材

2020年10月26日 07時20分

JT−60SAの本体機器。トカマク型と呼ばれるドーナツ型の真空容器内で強力な磁場を発生させ、プラズマを閉じ込める

 本紙は二十五日、那珂市にある量子科学技術研究開発機構(量研機構)那珂核融合研究所で、核融合発電の実用化に向けた新たな大型実験装置「JT−60SA」を取材した。セ氏一億度を超える超高温の「プラズマ」を強力な磁場で閉じ込め、水素同士を核融合させる実験を、早ければ年内にも再開する予定だ。(宮尾幹成)
 JT−60SAは二〇〇七年に建設を始め、今年三月に組み立てが完了。現在は十二月の初プラズマ着火を目指し、各機器の試験運転を続けている。
 「トカマク型」と呼ばれるドーナツ型の真空容器を備えた本体機器は、世界最大級の高さ十六メートル、直径十三メートル。容器内に燃料の水素を入れ、高周波の電磁波や高いエネルギーを持つ粒子で加熱して超高温のプラズマを作り出す。これにより通常は反発する原子核同士がぶつかり合い、一定の確率で核融合が起きるようになる。
 さらに、プラズマの密度を上げることで核融合の効率を高める。容器内には超電導コイルで強力な磁場を発生させ、プラズマが容器に触れないように閉じ込める。この状態を長時間維持する運転技術を確立するのが目的だ。
 JT−60SAは日本と欧州、米国、中国、インドなどが参加するITER(国際熱核融合実験炉、フランス)計画と並行したプロジェクト。実験の成果を、二五年の初プラズマ着火を目指すITERに反映させるとともに、核融合発電の経済性を検証する原型炉に向けた研究も担う。
 日本原子力研究開発機構(核融合部門は一六年に発足した量研機構に移管)が運転した旧装置「JT−60」は、〇八年に二十三年間の実験を終了。旧装置では十秒間しか保てなかったプラズマを、新装置では百秒間にわたって維持できる設計となっている。
 ITERでは高い熱出力が得られる重水素とトリチウム(三重水素)を燃料に用いるが、JT−60SAの実験は水素(軽水素)や重水素で実施する。放射性物質のトリチウムを使わない分、規制が少なく、機動的な実験が可能という。
 核融合発電は、直接的には二酸化炭素(CO2)を排出せず、ウランやプルトニウムを燃料とする原発と異なり高レベル放射性廃棄物も発生しない。
 とはいえ、巨額の国家予算を投じ続けることには国民の理解が欠かせない。核エネルギー利用に対する不安にも応える必要がある。花田磨砂也副所長は「経済性の観点も含めて課題がある。社会的なコンセンサス(合意)を図りながら前に進めないといけない」と話す。
 文部科学省は二一年度予算の概算要求で、量研機構への補助金として、ITER計画や関連する研究開発の経費に二百八十五億七千六百万円(前年度予算額より約七十二億円増)を盛り込んだ。このうちJT−60SAには二十七億四千三百万円(同約十億円増)を充てている。
 さらに、文科省予算に計上される量研機構運営費交付金で、旧施設から引き継いだ、高エネルギー粒子をプラズマに打ち込む機器の改良などにかかる十四億四千四百万円(同約七億円増)が賄われる。

中性粒子ビーム入射装置。高いエネルギーの粒子をプラズマに打ち込んで1億度以上に加熱する=いずれも那珂市で

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