「自己都合」失業手当 給付早まる 生活支え、転職を後押し

2020年10月26日 07時34分
 退職した場合、次の職を得るまでの生活を支える失業手当。10月1日から、転職のためなど自らの都合で退職した人が、手当を受け取れるまでの期間が2カ月間に短縮された。従来の3カ月間に比べ1カ月短い。多様な働き方を掲げる働き方改革の一環で、安心して転職、再就職活動をできるようにするのが狙い。ただ、コロナ禍で雇用状況が悪化する中、効果を疑問視する声も漏れる。 (佐橋大)
 失業手当は、雇用保険に加入し、一定の要件を満たした人が退職した場合に受け取れる。解雇などの会社都合による退職は、ハローワークへの離職票提出後一週間で手当の支給が始まるが、自己都合の場合は三カ月間の制限が設けられていた。安易な退職を防ぐのが目的だが、この長さが転職に踏み切れない理由の一つとみられてきた。
 非正規公務員として働く岐阜県の五十代女性。今年夏、職場の人間関係に悩み、退職、転職を真剣に考えた。しかし、辞めるには三カ月分の生活費をためる必要がある。一方で、来年三月までの契約期間満了後に辞めれば、会社都合の扱いになって受け取りも早い。給付制限期間の一カ月短縮は「私のようにつらい思いをしている働き手にもありがたい」と話す。女性は結局、思いとどまった。
 厚生労働省によると、十月からの短縮は労働者側、使用者側双方の要望を受けたものだ。労働者にとっては、離職後の生活を安定させられる利点がある。昨年十月の労働政策審議会の雇用保険部会では、労働者側の委員から「無収入が長く続くことは、雇用のミスマッチにつながる」という声が出た。就職を急ぎ、自分に合わない企業に再就職してしまう例が少なくないからだ。一方で、使用者側には、転職しやすい環境を整えることで、IT関連や介護といった人手不足感の強い業種で人材確保をしやすくする狙いがある。
 短縮の対象は、十月一日以降に自身の都合で退職した人。安易な退職を助長しないよう、五年で三回目以降の退職は、従来通り三カ月の制限がかけられる。
 失業手当の給付日数は雇用保険に入っている年数で違う。一定の条件を満たせば通算することができ、例えば被保険期間が十年以上二十年未満なら最長百二十日間だ。四週ごとに失業認定を受け、四週分の手当を受け取る。再就職するか、給付期間が終わるまでこれを繰り返す。一日当たりの支給額は原則、離職前に支払われていた賃金日額の45〜80%だ。四十五〜五十九歳は八千三百七十円までなど、年齢層ごとに上限額が設定されている。
 短縮に伴い、厚労省は二年後をめどに、離職率や再就職までの期間の変化を検証する考えだ。ただ、人材の流動化に効果があるかは未知数。二日発表の八月の有効求人倍率は一・〇四倍だった。前月を〇・〇四ポイント下回り八カ月連続で低下。六年七カ月ぶりの低水準に陥っている。コロナ禍での先行き不透明感から、求人を手控える動きが広がるためだ。働き手からは「よほどでないと、退職は選べない」という声も上がる。
 労働組合関係者はどう見るか。一人からでも入れる名古屋ふれあいユニオン事務局長、鈴木晴雄さん(59)は「離職者の生活安定を図る意味では朗報」と評価する。半面、パワハラや雇い止めの相談を多く受ける立場から、短縮が自己都合による退職を促すことになってはいけないとも。「ハローワークが調査し、退職理由がパワハラなどと認めれば、会社都合の退職扱いになることもある」と指摘。手当の支給開始時期など会社都合の方が条件はいい。「離職理由がどうなるかなど、疑問があれば労働組合やハローワークに相談をして」と訴える。

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