「社会が変わるまで声を上げ続ける」 前例なきタイのデモを写真で追う

2020年10月26日 17時00分

16日、道路を占拠したデモ隊と警官隊が衝突。デモ隊は高圧放水を受けて強制排除された

 政治対立や政権への不満から抗議活動が過激化し、軍部の介入で収束を図る―。そんな政変の歴史を繰り返してきたタイで再び、市民デモが広がっている。破壊や略奪、火炎瓶が飛び交う光景はなく、若い世代が平和的な手法で政府に要求を突きつける。ただ、日増しに過熱し、双方が歩み寄れないまま長期化する可能性もある前例のないデモを写真で追った。(バンコク・岩崎健太朗、写真も)
 「収入は低いまま、物価は上がり続ける。一方、政府関係者やお金持ちは優遇され続けている」。バンコクで21日、群衆の中で姉とデモ行進していた高校生のピンさん(17)はそう訴えた。洗濯の仕事で家計を支える祖母と3人暮らし。国の支援はないに等しい。「社会が変わってほしい。それまで声を上げ続ける」。この日までの1週間、ほぼ毎日足を運んだ。

21日、学校帰りに参加した高校生。「首相辞任、憲法改正、改革を」「私たちの声を尊重して」と訴えた

 7月以降に拡大したデモは当初、学園祭のようにも見えた。大学生ら若者が大半を占め、政治的主張だけでなく、ステージが設けられ、バンドのライブ。屋台も並ぶ。潮目が変わったのは今月14日。水曜の昼にもかかわらず、1万人以上が集まった。折しも、別荘のあるドイツで多くを過ごすワチラロンコン国王が帰国中。それまで好きにさせていた政府も強制排除、リーダーの大量逮捕に踏み切った。

14日、首相府前で抗議の印となった3本指を掲げる若者たち。後方はワチラロンコン国王の肖像

 これが反発を招き、若者らは市街地に打って出た。交差点を占拠。関心が薄かった市民も加わり、勢いを増した。鉄道や商業施設の営業に支障が出ているが、時間帯が限られ、一歩離れれば日常の風景だ。デモ自体も粗暴な振る舞いはなく、学生が座り込みながら宿題をするほほ笑ましい姿も。救急車などが差しかかれば、大声を掛け合い、道ができる。
 だが、警官隊と激しくにらみ合う局面では怒声が飛び交う。血気盛んな一部が暴徒化し、当局や王室支持派と偶発的な衝突の危険もはらむ。過去、クーデターで政権を退陣に追いやった軍部は、批判の矢面に立つプラユット政権と一体だ。前国王は市民の要求に耳を傾け、仲裁役にもなったが、今は国王にも矛先が向く。流血の事態の二の舞いを避けるための、膠着の打開策はまだ見えない。

14日、デモ会場となった首相府前の路上にはプラユット首相の顔も登場。この後、非常事態宣言が発令され、居残った参加者が強制排除された

21日、学校帰りに参加した大学生。「出ていけ、プラユット首相」「君主制の改革を」との訴えを掲げる

参加者の中には僧侶の姿も(15日)。抗議の印の3本指をあしらったうちわを掲げた

15日、デモは市街地に移り、7車線の目抜き通りを占拠した。現場は百貨店やホテルが並び、東京・銀座のような中心部だ

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