アメリカの政治を変えるか 大統領選のカギ握るマイノリティー 投票の後押しも

2020年10月26日 11時15分
 11月3日の米大統領選では、激戦の各州でヒスパニック系や黒人などのマイノリティー(少数派)票が勝敗の鍵を握る。ただ、米国では投票に事前登録が必要で、少数派はさまざまな事情で断念することが少なくない。こうした現状を変えようと有権者登録運動を進めるアリゾナ州の現場を取材した。(同州で、杉藤貴浩、写真も)

アリゾナ州フェニックスで、1万5000人登録の目標を掲げた「気温計」の前に立つオマー・マデロさん

◆目標1万5000人 市民権の取得も支援

 乾いた熱風が吹き付ける州都フェニックス。ヒスパニック系住民の投票率向上を目指す市民団体「ミ・ファミリア・ボータ(MFV)」の事務所には、暑い土地柄らしく、気温計を模した「ノルマ表」が掲げられていた。
 「目標は1万5000人の有権者登録を達成すること」と担当のオマー・マデロさん(29)は力を込めた。「新型コロナウイルスの影響でペースは鈍ったが、もう少しで届きそうだ」。MFVはヒスパニック系の多い同州やカリフォルニア、テキサス、フロリダなど計6州に拠点を置き、有権者登録のほか米国市民権の取得などを支援している。

◆白人女性がプラカード掲げ…苦い記憶

 なぜ、少数派の政治参加が大切か。メキシコ移民でMFVアリゾナ州代表を務めるエドアルド・サインツさん(27)には苦い記憶がある。
 同州では2010年、外見から不法滞在が疑われる場合、警察官が対象者に在留資格の提示を求め、不所持の場合は逮捕できる州独自の移民法案を巡って大論争が起きた。反移民、反人権的な内容に、学生だったサインツさんも抗議活動に加わったが、最後は多数派の共和党知事の下で法は成立した。
 「抗議に行った州庁舎で白人女性が『ははは、知事は署名した』と書いたプラカードを掲げていた光景が忘れられない」とサインツさん。この経験から、自分たち少数派の意見を投票によって反映させる重要さをかみしめたという。
 だが、移民や移民2世が多い米国のヒスパニック社会では、有権者登録に必要な身分証を持っていなかったり、経済的理由から毎日の仕事に追われて政治参加を敬遠したりする人々も少なくない。スペイン語と英語との壁もある。

◆ヒスパニック系が政治を変える可能性

 そこでサインツさんやマデロさんは、地元の大学や高校、事業者などと連携。戸別訪問も繰り返し、ヒスパニック系住民に投票の重要性や有権者登録の仕方、候補者の分かりやすい比較などを示してきた。
 そして今回、MFVは大きな決断を下した。これまで特定の候補を応援したことはなかったが、「移民が犯罪を持ち込む」としてメキシコとの国境沿いに壁を築くトランプ大統領に反発。民主党のバイデン前副大統領への支持を打ち出したのだ。サインツさんは「われわれを侮辱することは認めない」と語気を強める。
 アリゾナなど西部や南部では、ヒスパニック系人口の増加が続く。マデロさんは言う。「この地域が米国政治を大きく変える可能性がある」

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