原発新増設狙いか…温暖化ガス「ゼロ」宣言 菅首相の所信表明

2020年10月27日 06時00分
 菅義偉首相が宣言した温室効果ガス実質ゼロの実現を理由に、前面に出そうなのが原発の推進だ。石炭火力発電の削減という優先課題に対処せず、東京電力福島第一原発事故後、政府が表立って議論してこなかった原発の新増設へ動きだしかねない。

◆省エネ、再生エネとともに強調

 首相が原発に触れたのはわずか15文字だった。それでも、「安全最優先で原子力政策を進める」という表明に、大手電力会社の幹部はわずかな変化を感じ取った。「省エネ、再生エネ、原発の3つを強調した。いよいよ原発の新増設を視野に入れているのでは」と話す。
 前の安倍政権は、原発を「脱炭素化の選択肢」という表現にとどめていた。再稼働と小型原子炉など新技術の開発支援を進めてきたが、原発の新増設への言及を避け続けた。しかし菅政権が原発を脱炭素化の「柱」に据えれば、くすぶってきた新増設が現実味を帯びる。
 今月開かれた国のエネルギー政策を議論する有識者会議では「再生エネだけでは脱炭素化はできない」と、原発新増設の必要性を訴える発言も出た。加藤勝信官房長官は青森県との会合で、原発の使用済み核燃料を繰り返し使う核燃料サイクルの推進を表明した。
 しかし、核燃料サイクル政策は破綻しており、核のごみの処分先も決まっていない。原発事故の発生から9年半が過ぎても3万人以上が避難を続けている。温暖化対策を盾に、原発の負の側面を無視すれば、そのツケは大きくなる。

◆脱・石炭には電力会社反発

 一方で、政府は、欧州で進む石炭火力発電の削減には本腰を入れてこなかった。日本の温室効果ガスの約4割は発電所などが排出源。2030年までに目指す「非効率石炭火力の段階的休廃止」に関して、電力会社などの反発を抑える抜本策を打ち出していない。
 製鉄所内に建てられた石炭火力の廃止も難しい。鉄をつくる際に排出される石炭由来のガスを燃料に再利用しており、日本鉄鋼連盟特別顧問の小野透氏は「鉄鋼生産と一体化しているため、発電所だけ止められない」と訴える。
 政府は、電力会社の新設・建て替え計画など石炭火力の温存を容認している。NPO法人気候ネットワーク東京事務所の桃井貴子氏は「欧州など34カ国は脱石炭火力を宣言した。日本も段階的に廃止するべきだ」と政策転換を求めた。 (小川慎一、妹尾聡太)

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