<ねぇゴローちゃん!腹話術師の旅日記>無知反省「寄り添いたい」 ハンセン病療養所の高齢女性「初めて見た」

2020年10月27日 07時33分

駿河療養所で上演した当時の資料や写真を手に、思いを語るしろたにさん=幸区で

 客席にいた八十代くらいのおばあちゃんが、ゴローちゃんの手を握ってぽつりと言いました。「こんなの初めて見たよ」
 二〇〇三年九月、静岡県御殿場市にある国立ハンセン病療養所「駿河療養所」の敬老会で演じた時のことです。客席には入所者五十人くらい。「初めて見た」という言葉が、胸にぐっときました。
 腹話術は、地域のお祭りなどで盛んに演じられていました。けれども、おばあちゃんは小さいころに療養所に入ったので、見る機会がなかったのでしょう。ゴローちゃんの芸を大いに笑ってくれました。
 うちのかみさんが、がんを克服した話題で、「笑って過ごすと元気になるんだね」と私。ゴローちゃんが「だから、きょうは面白くなくても笑ってください」と語りかけると、会場がどっと沸きました。
 その二年前、ハンセン病訴訟で画期的な判決がありました。隔離政策の違憲性を認めて、国に賠償を命じた〇一年の熊本地裁判決です。駿河療養所近くで開かれた報告集会に私が呼ばれた縁で、敬老会への出演となりました。
 準備のために本を読み、支援運動をしている人たちに話を聴きました。感染力は弱いのに過度に恐怖心をあおり、特効薬で「治る病気」になってもなお、一九〇七(明治四十)年に隔離が法制化されてから、判決まで九十四年にわたって患者、家族を苦しめ続けたのです。
 私は人生で、知らずにいて反省したことがいくつかあります。ハンセン病はそのひとつ。知らないということが、差別や偏見を許してきたんだ−。私もその一人として「とにかく寄り添いたいと思って、ここに来ました」と伝えました。
 今も、ハンセン病の新聞記事があると切り抜いています。ゴローちゃんと全国の療養所を回りたいと思っていますから。 (しろたにまもる=寄稿)

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