遠距離介護、コロナが壁 オンラインで見守りも一案 通信環境整えて

2020年10月28日 07時20分
 新型コロナウイルスの感染拡大で、遠く離れた故郷に住む高齢の親を介護するための帰省ができず、苦労を重ねている人もいる。冬が近づき、インフルエンザと新型コロナの同時流行も懸念される中、「お盆だけでなく正月も帰れないのでは」と不安が高まる。専門家は「移動制限が緩和された今のうちに実家へ帰り、オンライン環境を整えるのもお勧め」などとアドバイスする。 (五十住和樹)
 「東京などの感染拡大地域から家族が帰ってきた場合、利用者に二週間はデイサービスを休んでもらう。訪問介護も出せない」。高松市の女性ケアマネジャーは、介護保険サービスの“地元ルール”をこう説明する。帰省した場合は二週間、家族で介護しなければならない。このルールは新型コロナの緊急事態宣言が発令された頃に自然にでき、今も続いているという。
 新型コロナ感染者との濃厚接触者は二週間、外出を自粛し、自宅での健康観察を求められる。感染拡大地域の人を全て「感染者」のように扱い、接触した高齢者に二週間の介護サービス休止を求める例は他の地方でもあるようだ。
 東京に住む五十代女性は、九州の実家に一人で暮らす八十代後半の母親の様子が気になり、宣言解除後に帰省を計画。母親の担当ケアマネに介護サービス見直しの相談もする予定だったが、「東京から来るあなたと会ったら私は二週間、他のお宅を訪問できない」と言われ、帰るのを断念した。電話で話した母親自身も、近所の目を気にして帰省を歓迎している様子ではなかったという。
 子どもが帰省できず、親の持病を悪化させかねないケースも。コロナ禍前は半年に一回、一人暮らしの八十代の母親の検査入院に合わせて、東北の実家に帰っていた都内の五十代女性は宣言以降、病院から「東京の人は来ないで」と言われ、入院日を何度も後ろにずらした。手遅れになるのを心配して結局、東北にいる遠い親戚に代わりに母親を病院へ連れていってもらった。女性は「病院が神経質になるのは分かる」と理解を示しつつ、「親戚がだめなら自費でヘルパーを雇うしかない」と気をもむ。
 ある都市部に住む六十代女性は、古里の施設に入所中の八十代の父親に、今年初めに生まれた男のひ孫を会わせたかった。「面会は全部断っている。来るなら全員防護服で」という施設側に、女性は「コロナ収束を待っていると、父の命が尽きてしまうかも」と交渉。宣言解除後の六月にようやく実現した“面会”では、施設の門まで車いすで来た父親に、女性ら家族が車道を挟んだ反対側から手を振り、スマホで会話した。
 感染すると重症化する危険性が高い高齢者を預かる施設側は、十分な感染防止対策をとっていても、外部の人との接触に神経質にならざるを得ないのが実情だ。今も、面会の制限をしている施設は少なくない。
 離れて暮らす親のケアをする子世代の情報支援などに取り組むNPO法人「パオッコ」(東京)理事長の太田差恵子さん(59)は、再流行時に県境をまたぐ移動が制限される事態に備え、親の様子を画像で確かめられるオンライン環境を整えることを勧める。「親にシニア用スマホを教えてみては。ビデオ通話ができれば、親の顔を見て話しながら様子を確認できる」と提案する。
 ◇ 
 パオッコは十一月八日午後三時から、オンラインによる遠距離介護セミナー「コロナ禍で『親をみる専門職から、離れて暮らす子に伝えたいこと』」を開く。参加無料。定員百人。申し込みはパオッコホームページで先着順で受け付ける。当日参加できない場合は後日、動画の配信を受けられる。

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