「食べもの通信」創刊50年 安全性検証から献立まで 正確な情報伝え続ける

2020年10月28日 07時37分
 栄養士らでつくる「家庭栄養研究会」(東京)が編集する月刊誌「食べもの通信」が今年、創刊から五十年を迎えた。グルメやレシピなど食にまつわる情報誌は多くあるが、一貫して「食の安全」を編集の中心に据え、食を取り巻く社会の動きを取り上げる特色ある雑誌だ。 (小林由比)
 創刊は一九七〇(昭和四十五)年七月。当時の編集長で、今も編集委員の一人である増子(ますこ)弘美さん(72)ら数人の栄養士がその前年に、研究会を立ち上げたのが始まりだった。当時、森永ヒ素ミルク事件の被害者の深刻な後遺症が明らかになったり、胎児の障害なども招いたカネミ油症事件が起きたりと、食の安全が大きく揺らぐ事態が相次いでいた。増子さんは「栄養士として栄養バランスを教えること以前に、食品公害から子どもの命を守らなくてはと思い立った」と振り返る。
 食品の安全性や栄養など国内外の最新情報を入手、発信できるように、研究者や専門家らとネットワークを作り、育んできた。「特集したテーマを見ると、この五十年の食の歴史が見える」と増子さん。七〇年代は農薬による母乳の汚染や食品添加物の問題、八〇年代は急増する子どものアレルギーや食品の輸入自由化などを取り上げた。二〇〇〇年代には、土地に根差した食文化を見直すスローフード運動や食育。ここ十年は遺伝子組み換え食品や、合成香料で体調不良になる「香害」などのテーマにも取り組む。
 一方で、読者が日々の生活で実践できる、商品の具体的な選び方や料理レシピなども併せて紹介している。編集委員長の松永眞理子さん(69)は「今晩のご飯はどうする、ということまで伝えることで、読者に頼りにされているのでは」と分析。読者から寄せられる声を、テーマの参考にすることも多いという。

半世紀前の創刊時の編集長だった増子弘美さん(右)と今の編集委員長の松永眞理子さん=東京都千代田区で

 発行部数は一九九〇年代後半に九千部とピークを迎えたが、二〇〇九年ごろに三千部ほどに落ち込んだ。一一年の東京電力福島第一原発事故後、放射能汚染を避ける方法をいち早く特集するなどして存在感を示し、現在は約八千部を維持。定期購読が中心で、全国の大手書店でも取り扱う。
 保育園や学校給食に携わる人たちにも活用されてきた。兵庫県尼崎市で三つの保育園を運営する社会福祉法人「杉の子会」では、各園の栄養士や保育士らでつくる給食委員会が雑誌をテキストにして献立作りなどに生かす。保護者に食の大切さを伝えようと、記事を資料とした、お便りも発行。同会理事長の福元孝子さん(80)は「流行に流されず、何を大切にすべきか学ぶことができる」と信頼する。
 五十周年記念号と銘打った十月号(五百九十六号)の巻頭は、「一汁一菜」の家庭料理を提唱する料理研究家土井善晴さんのインタビュー。特集「50年で激変! 子どもたちを取り巻く環境」では、有害な化学物質が子どもたちの健康にもたらす影響を、データや現場の実践など多角的にまとめた。妊娠中から離乳期にかけて気をつけたいポイントも掲載している。
 約二十人の編集スタッフと読者の高齢化が課題だが、松永さんは「情報が氾濫する今こそ、命と健康に直結する食の安全について正確な情報を伝える重要性が高まっている」と感じる。「まずは知ることが大切。若い世代の人とも一緒に学び合っていきたい」
 雑誌はB5判で税抜き六百円。年間購読は送料・税込みで八千八百八十円。(問)食べもの通信社=電03(3518)0623

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