<コトバ言葉>まむし

2020年10月28日 07時45分
 林芙美子さんの小説を原作に、一九五一年、公開された映画「めし」は、大阪を主な舞台に倦怠(けんたい)期の夫婦を描いた作品。序盤、東京から家出してきためいを、夫が大阪観光に連れ出し、「まむし」と書かれた看板を掲げた料理店に入る場面があります。
 この「まむし」は、毒のある蛇ではなく、うな丼のこと。めいは拍子抜けしたような表情で、箸をつけます。大阪市水産物卸協同組合は、大阪のうな丼はご飯とご飯の間にかば焼きを挟み、ご飯をまぶしながら食べるため、「『まぶし』が『まむし』になった」「“飯蒸し(ままむし)”や“鰻飯(まんめし)”が『まむし』」になったという説があると紹介しています。また、江戸時代後期に書かれた『近世風俗志』には「鰻飯 京坂にて『まぶし』江戸にて『どんぶり』と云鰻丼の略也」とあり、蛇のマムシは、関係がなさそうです。
 原作では、まむしは百円。『続続値段の明治大正昭和の風俗史』(朝日新聞社)には、同時期のラーメンの標準価格が四十円とありますから、現在なら千五百円ほどでしょうか。 (鈴木洋生)

関連キーワード

PR情報