コロナと知事選 指導者像に変化の兆し

2020年10月28日 07時58分
 半世紀ぶりに保守分裂となった富山県知事選では、新人が現職の五選を阻んだ。新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、有権者が求める知事像に変化が起きていることもうかがえる。
 全都道府県の中で、有権者に占める自民党員率が一番高いのが富山県だ。一九六九年に当時の副知事と県部長が激戦を演じた以降は保守対革新の顔合わせだったものの、いわゆる無風選挙が続いた。
 今回は、自民県連が推薦した元自治官僚の現職石井隆一氏(74)に一部自民議員らが推した日本海ガス元社長新田八朗氏(62)が挑む「官対民」の構図となった。
 両氏ともコロナ対策を最優先に訴えた。石井氏はPCR検査一日最大千五百件体制の早期実現を掲げた。新田氏はスピード重視の経営支援と新産業の創出を説いた。
 コロナ禍は、いわば前例がなく正解もわからない危機。国の方針が揺れる中で、かつてないほど知事の役割にスポットが当たった。
 仁坂吉伸和歌山県知事は国の目安に縛られないPCR検査の拡充をいち早く実践。平井伸治鳥取県知事は感染者ゼロのうちから病床を確保した。自らの判断で先手を打つ行動力が好感を呼んだ。
 休業要請と補償金のセット化を求め、国にもの申す知事たちも現れた。小池百合子東京都知事が大差で再選を果たしたのもコロナ対応への評価が影響していよう。
 知事というポストへの見方が変わったことで、富山県知事選でも官僚出身の手堅い行政手腕だけでは物足りないと感じ、民間のビジネス感覚に期待を寄せる心理が働いた可能性がある。
 高齢と多選も争点となった。不確実性が高まる時代だけに、マンネリ化への懸念が、世代交代論を後押ししたともいえる。
 実際、保守王国とも呼ばれる北陸では、昨年四月の福井県知事選で富山同様五選を期した現職(元自治官僚)が敗れた。両県の結果は、全国最多の七期を務める石川県の谷本正憲知事(同)の去就に影響を与えることも考えられる。
 全国的に知事の世代交代が進み、一期(十三人)二期(六人)三期(十四人)で全体の七割を占める。四期目以上の知事は十四人いて、富山に続き栃木、岐阜県の現職が五選を目指す。
 新型コロナウイルスの収束は見通せず、各知事の一挙一動が注視される時が続くだろう。横並びではない、訴える力と行動力を備えた存在感のあるリーダー像を求める傾向は強まるかもしれない。

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