携帯料金値下げ 公正な競争が前提だ

2020年10月28日 07時58分
 総務省が携帯電話料金の値下げに向けた新計画を公表した。菅政権の最重要政策であり本気度が伝わる内容だ。ただ製品価格の設定は企業の自由裁量に委ね、介入は原則避けるべきである。
 公表された「アクションプラン」には「eSIM」の普及が盛り込まれた。携帯を使う場合、電話番号情報などが記憶されたSIMカードと呼ばれるチップを差し込む必要がある。携帯会社を変更する際、SIMも新たに入手する必要があり変更の妨げになっていた。
 eSIMは携帯に内蔵されるのでチップ入手の手間が省ける。さらにプランでは会社を変えてもメールアドレスがそのまま使えるよう求めた。いずれも利用者の契約会社選択の幅を広げる施策であり支持したい。
 携帯料金について菅義偉首相は「世界で最も高く(携帯各社は)20%もの利益率を上げている」と指摘する。総務省も各国と比べ料金が高いと分析している。大半の利用者も異存はないだろう。
 携帯の契約では複雑な料金体系も問題視されてきた。契約の際、その場で内容を把握することは難しい。中途半端な理解で契約してしまうケースも多いはずだ。
 この点が「料金が高い」という感覚に拍車をかけていることは否定できない。携帯各社には契約の複雑さの解消や料金体系の分かりやすさへの努力を求めたい。
 政権側は料金高止まりの背景には、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの三社による約九割(契約数ベース)という市場寡占があるとみる。この状況は長く続いており、価格設定に影響していることは間違いない。
 ただ価格について安易に政府が口を出すことには異論を唱えざるを得ない。製品市場は新たな参加者を自由に迎え、公正な競争が行われることが理想だ。自由競争の下での価格設定が最終的に消費者利益になるからだ。
 今回の動きと並んでNTTドコモがNTTの完全子会社になることが決まった。NTTは政府が三割以上の株式を保有しており、その子会社も政府の影響を受けることは容易に想像できる。NTTを通じ業界全体が政府の支配下に置かれる恐れもある。
 携帯電話は社会基盤であり時には命をつなぐ道具にもなる。政府が深く関心を持つことは理解できる。ただ長期的な消費者利益を考慮すれば、介入を避け公正な競争を促す政策に徹するべきだ。

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