監視カメラに鉄格子、所持金は取り上げられ… 引きこもり支援の「引き出し屋」を集団提訴

2020年10月29日 06時00分

「自由がなく苦しかった」などと話す原告たち=28日、横浜市中区で

 ひきこもりの自立支援をうたう業者に自宅から無理やり連れ出されて施設に監禁されたとして、関東地方の20~40代の元入所者7人が28日、運営法人と代表者らに計2800万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。こうした業者は「引き出し屋」と呼ばれ、各地で訴訟が相次いでいるが、弁護団によると、集団提訴は初めてという。

◆「おまえに拒否権はない」無理やり施設へ

 施設は、一般社団法人「若者教育支援センター」(東京都港区)が運営するワンステップスクール湘南校(神奈川県中井町)。共同生活しながら、資格取得の学習やボランティア活動をし、自立を支援しているという。法人代表理事の広岡政幸氏は、大人のひきこもりについての著書もある。
 訴状によると、7人は2017~19年、突然自宅を訪れたスタッフに「おまえに拒否権はない」などと言われ、無理やり施設へ連れて行かれ、約1カ月~約2年2カ月間入所させられた。建物には監視カメラ、一部の部屋の窓には鉄格子が設置。携帯電話や所持金を取り上げられ「逃げ出すのは困難だった」と主張している。
 原告代理人弁護士は提訴後の記者会見で「多数の被害相談を受けている。救済につなげていければ」と話した。

◆施設側は全面的に争う姿勢

 広岡氏は「本人の同意なく同行してもらうことはありませんので、全面的に争う予定です」とのコメントを発表した。
 引き出し屋を巡っては、東京地裁が昨年12月、別の業者に対し、無理やり連れ出したことなどを認め、元入所者の女性と母親に約500万円の賠償を命じる判決を言い渡している。

◆元入所者「今も連れて行かれる夢を見る」

 「人生で一番の恐怖」「自由がなかった」。ワンステップスクール湘南校の運営法人などを28日に提訴した原告のうち2人が横浜市内で記者会見を開き、連れ出された時の恐怖や今も続く苦しみを明かした。
 精神科を受診していた30代男性は2018年3月、自宅に突然現れた施設スタッフに連れ出された。スタッフはかかりつけの精神科医の指示があるように装い、着替えや入浴する間も与えなかったという。
 男性は施設を逃げ出し、現在は就職活動中だが「恐怖が植え付けられ、今でも連れて行かれる夢を見る。働けないくらい精神を傷つけられた」と話す。「実態を司法で明らかにして、被害がなくなるよう、ひきこもりの支援ができる国を目指してほしい」と訴えた。
 西日本から連れ出されたという20代男性は「遠隔地から連れ出されると、逃げ出すことも困難」と話す。入所直後は窓を開けることすらできない部屋に入れられたといい、「何が食べたいとか、どこへ行きたいとか、普通の人が持てる自由がなく苦しかった」と明かした。(米田怜央)

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