「自助」か「共生」か 菅首相と枝野氏、目指す社会は重ならぬまま

2020年10月29日 06時00分

首相の所信表明に対する代表質問が行われた衆院本会議=28日、国会で

 菅義偉首相と立憲民主党の枝野幸男代表による初の直接対決が28日、衆院本会議の各党代表質問で行われた。国民に「まずは自助」と説く首相に対し、枝野氏は「共生」の重要性を強調。新型コロナウイルスによる経済や日常生活への影響が長期化する中、1年以内に行われる衆院選をにらみ、与野党第1党の党首が目指す社会像を巡って議論を戦わせた。(横山大輔、井上峻輔)

◆衆院選見据え「新自由主義は本当に正しいか」

衆院本会議で代表質問する立憲民主党の枝野代表(手前)。奥右は菅首相

 「自助努力を迫る自己責任論が強まる中、追い込まれても頼ることをためらう風潮が広がっている。首相にこうした実態が見えているのか」
 枝野氏が質問で真っ先に切り出したのは、今国会最大の焦点である日本学術会議の問題ではなく「自助」を繰り返す首相の政治姿勢への疑問だった。コロナ禍で生活に窮する若者から寄せられた「政治に私たちは見えていますか」という言葉を紹介し「全ての国会議員が真剣に受け止めるべきものだ」と語気を強めた。
 先月の野党合流で新党を立ち上げ、初めて迎える国会論戦。枝野氏は政権交代をかけて臨む次期衆院選を見据え、立民が掲げる「共生社会」の説明に時間を割いた。
 旧民主党政権で中枢として、税率引き上げにかかわった消費税の時限的減税を打ち出したのも「自分の力だけではどうにもならない困難や危機に直面することがある。政治と行政の力で、お互いさまに支え合う仕組みをつくる」ことが必要との考えからだ。
 批判の矛先を向けたのは、首相の言動から浮かび上がる競争重視の政策。生産拠点の海外移転促進が招いたマスク不足や、ベッド数削減のあおりを受けた医療機関の逼迫など、コロナ禍で明るみに出たいくつもの問題を指摘し「新自由主義的な社会のあり方が今も、これからも本当に正しいのかが突きつけられている」と訴えた。

◆反論する首相「競争できる企業増やす」

衆院本会議で答弁する菅首相

 「政策の根本を貫く考え方が自助、共助、公助、そして絆だ」
 首相は枝野氏の問いかけに、9月の自民党総裁選から幾度となく披露してきたフレーズをこの日も使った。格差対策で「固定しないよう、許容し得ない格差が生じないよう、さまざまな施策を進めていく」との考えを示しつつ「まずは自分でやってみる。そして家族や地域で助け合う。その上で政府がセーフティーネットで守る」と主張。その姿勢には、秋田から上京し、自らの力で今の地位まで上り詰めたという「成功体験」への自負がのぞく。
 自助の発想は、コロナ禍の影響が大きい中小企業政策でも透けて見えた。「海外で競争できる企業を増やすことが重要。中小企業の経営資源の集約化による事業の再構築などで生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みをつくり応援する」と、赤字企業の淘汰もやむを得ないとの考えをにじませた。
 質問の最後に「日本をどんな未来へと導こうとしているか」と問うた枝野氏。「行政の縦割りやあしき前例主義を打破し、改革を実現していく」と応じた首相の言葉を、枝野氏は終了後の記者団の取材に「説明になっていない」と断じた。代表質問の質疑は一方通行だが、来週には衆参両院の予算委員会で双方向での議論が行われる見通し。ようやく始まった国会で、論戦は本格化していく。

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