障害者独自の明るい身体表現を 「劇団態変」来月東京公演 相模原事件念頭に「若い世代に伝える」

2020年10月29日 07時50分

相模原事件被害者への追悼を込めた「箱庭弁当」の一場面(photo by bozzo)

 障害者にしか演じられない独自の身体表現を追究する大阪のパフォーマンスグループ「劇団態変」が来月、二年ぶりに東京で公演する。上演するのは「箱庭弁当−さ迷える愛 破」。主宰者で作・演出、芸術監督の金滿里(キムマンリ)は「すごく明るくて、わくわく浮き浮きする作品。態変の舞台が初めての人もぜひ」と語る。 (出田阿生)
 役者は全員が脳性まひや手足の変形などがある障害者。金も三歳の時にポリオ(小児まひ)になり、首から下がほぼ動かなくなって七歳から十七歳までは施設で過ごした。舞台ではレオタードをまとってその姿態を見せ、それぞれが固有の動きを生かして表現する。身体性と強く結び付いた芸術は、海外でも高く評価されている。
 ふだんは抽象表現が多く、今回上演する「箱庭弁当」は異色だ。あらすじは「飽きられて捨てられた弁当のご飯やおかずたちがごみ箱から脱走し、違う世界に踏み出す冒険ロードムービー」。膨れたご飯や曲がった野菜、変形したエビフライなど、「規格外」の食べ物たちが登場する。障害者のいびつな体は「生産性がない」「役に立たない」と排除する現実を思わせる。

「劇団態変」主宰の金滿里

 作品は四年前に起きた相模原市の障害者施設の殺傷事件を念頭につくられた。金は「虐殺された十九人の魂はさまよい続けている。それなのに社会から忘れ去られていくのはあんまりじゃないか、と」と話す。「大人相手に伝わることってどんだけあんねやろ、と思って。若い世代や子どもにも届けたくてファンタジーを創作した」
 とはいえ、舞台は教訓めいた物語にはならない。相模原事件の被害者十九人は昆虫のアリとして登場する。「障害者はひどい目にあっても笑顔でいるだろう、そんな思い込みを壊したい。十九人に恨みや怒りを晴らしてほしい」と考えた。主役のタコウインナーはアリにむしゃむしゃと食べられるが、その後けろっと生き返る。
 登場するいびつな食べ物たちは、もともとは食べられる存在なのに「おなかをすかせている」設定だ。これは「食べる・食べられる」関係が逆転する可能性が常にあることを示す。高齢になれば体は動かなくなり、若くても事故や病気によって「食べられる」側になることがあり得る。昨年は難病女性の嘱託殺人事件が起きた。「ある日突然、自分が障害者になったとして、『死にたい』とつぶやいた途端に周囲が殺しにやってくる。そんな社会でいいのか」。観客は、想像力を働かせる必要性を自然に実感できる。
 メンバーは新型コロナウイルスの感染対策を徹底して稽古を重ねてきた。金は「コロナを機に、人の命をお金に換算していいという、権力の悪魔のささやきが忍び寄ってきていると感じる。『そうじゃない!』という大切なメッセージを届けたい」と語った。
 「箱庭弁当」は十一月六〜八日、東京都杉並区の「座・高円寺1」で、昼と夜の計五回公演。
 態変の事務局=(電)06・6320・0344。 

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