元徴用工訴訟の判決から2年 日韓の溝、埋まらず

2020年10月30日 05時50分
 菅義偉首相の就任後初めて行われた29日の日韓外務省局長間の話し合いでは、韓国人元徴用工訴訟を巡り、接点は見いだせなかった。韓国大法院(最高裁)が賠償を日本企業に命じてから30日で2年。韓国では日本の新政権の変化への期待もあったが日本側は動かず、双方の溝は埋まらなかった。(上野実輝彦、ソウル・相坂穣)

◆「率直な意見交換があった対面協議」

 「対面での協議は2月以来。率直な意見交換があった」。日本側の協議関係者は協議後、記者団にそう説明した。
 日本政府は判決は国家間の約束に反するとの立場。協議でも、資産現金化で日本企業が被害を受けないよう、韓国政府の働きかけを求めた。「司法判断を尊重する」と主張する韓国政府は、日本政府と被告企業に対応を求めた。3時間に及んだ協議は「率直」に原則論をぶつけ合い、意思疎通継続を確認して散会した。

◆「首相交代を関係改善の糸口に」

 それでも韓国政府高官は「対話の必要性を確認したことは意味がある」と評価した。韓国政府内には「対韓強硬派だった安倍晋三前首相から、実務家とされる菅首相への交代を関係改善の好機にしたい」(外務省当局者)との期待がある。
 新型コロナウイルスは韓国経済にも打撃を与えた。元徴用工問題と日本の輸出管理強化について「産業界からはセットで解決をとの圧力が強まっている」(与党「共に民主党」関係者)。対話を続け関係改善の糸口を探る方針だ。
 日本側から解決に動く気配は感じられない。首相は所信表明演説で「わが国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていく」と強調し、岡田直樹官房副長官は29日の記者会見で「関連の司法手続きは明確な国際法違反だ」と指摘した。今回の協議前から「韓国側から提案がなければ、こちらの姿勢は変えようがない」(官邸筋)と冷めた見方が広がっていた。
 コロナ禍を受けた両国間の往来規制が緩和された今月中旬、日韓議連幹事長を務める自民党の河村建夫元官房長官が訪韓し、韓国要人と会談した。だが政府高官は「政府間の関係改善とは関係ない」と言い切る。

◆韓国側、水面下では首相出席を打診

 判決で敗訴が確定した日本製鉄が韓国内で保有する株式などの資産を差し押さえ、売却して現金化するための手続きが進んでいる。現金化されれば日本側が対抗措置を取り、両国関係に深刻な影響を与える。
 韓国国会では野党議員が、日韓の企業や国民から募った寄付金を元徴用工への賠償に充てる解決法案を提出したものの、これまでに廃案になった案と同趣旨で、広がりは期待できない。
 「首脳同士がテーブルに着かないといけない。信頼感ができれば、韓国政府が、元徴用工の賠償を受け取る権利をいったん買い取って現金化を止めて、時間をかける方法なども検討できる」と語る与党関係者もいるが、会談実現は見通せない。
 韓国は次の日中韓3カ国首脳会談のホスト国。水面下で、日本に首相出席を打診している。これに対し外務省幹部は「日本企業の資産が現金化されない保証がない限り訪韓はできない」と明言する。「韓国側は首脳会談を外交成果にしたいだろう」とも話し、首脳会談への出席をカードにしたい思惑をにじませている。

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