「大阪都構想」盛り上がってますが… 東京23区を再編するなら?

2020年10月30日 06時59分
 大阪市を廃止して、四つの特別区を設置する大阪都構想。その是非を問う住民投票の投開票日が11月1日に迫り、激しい議論が繰り広げられている。一方、“本家”の東京都はかつて注目を集めた23区再編の議論がまとまらず、棚上げとなったままだ。もし今、23区を見直すとしたら−。識者と共に「新・東京都構想」を考えてみた。
 「東京二十三区は極めてアンバランスな状態。どういう姿がベストなのか、真剣に考えるいい機会だ」
 元都職員で大阪府・市の特別顧問を務める中央大名誉教授の佐々木信夫さんに二十三区再編の試案作成を依頼したところ、快諾してくれた。
 「バーチャル・新東京都構想」。佐々木さんから送られてきたA4五ページ分の試案は、こんなタイトルで書き出されていた。
 試案では、「(中核市相当の)人口四十万人以上七十万人以下を原則。現行の区割りを生かし、再編は数区の合併にとどめる」と各区の考え方を示した上で、現行の二十三区を十六区に組み直した。
 都心部では、千代田、中央、港区を「東京区」に、新宿、中野区を「東京西区」に再編。文京、豊島区は「小石川区」、台東、墨田区は「墨東区」、目黒、渋谷区は「山の手区」、北、荒川区は「飛鳥山区」に。残り十区は既存のまま残した。
 新区名の「飛鳥山区」は八代将軍徳川吉宗が整備した北区の飛鳥山公園、「小石川区」は、江戸初期に整備された小石川後楽園にちなんだ。「試案には、いろいろな意見があるでしょう。自分たちの地域をどうしていきたいのか、住民一人一人の考える材料にしてほしい」。佐々木さんは、そう力を込めた。
 実は二十三区の再編は、二〇〇〇年代後半にも大きな注目を集めたことがある。
 当時、道州制の議論が盛り上がり、地方分権推進の流れが加速。都と区は〇六年に「都区のあり方検討委員会」を設置した。都はより多くの権限移譲には、各区に一定規模以上の人口や財政力が必要になると主張し、行政の効率化を図るために区域再編を検討すべきと訴えた。
 これに対し、区側は「二十三区で一致した見解を持つのは困難」「権限移譲の議論を先行すべきだ」などと反論。都は〇八年、二十三区を六つの特別市に再編する森記念財団案や、都市工学者の浅見泰司東大教授らによる十六区再編案などを提示して検討を迫ったが、一致点を見いだせず、議論は入り口で行き詰まった。
 一〇年、委員会は「引き続きの課題」と報告して事実上棚上げに。以来十年、協議は書面開催のみで実質的な議論は一度も行っていない。
 佐々木さんは「東京の特別区は歴史もあり、これまで再編の議論はなかなか進んでこなかった」と指摘。その上で「大阪の特別区は権限や財源も大きい。大阪都構想が実現すれば、二十三区を巡る議論にも動きがあるかもしれない」と展望した。

◆現状は格差大

 23区の現在の人口は約967万人にのぼっている。最少は千代田区で約6万7000人。最多は世田谷区で約94万4000人。その差は14.1倍で、現在の23区になった1947年の約4倍から大きく拡大した。
 財政力は、都心部が突出しており、千代田区の区民1人当たりの本年度一般会計予算額は96万円で、33万円の杉並区の約3倍にのぼる。千代田区は区民の医療費を高校卒業年齢まで無償化。新型コロナ対策で全区民に一律12万円を給付するなど、財政力の差が住民サービスとして現れている。
 佐々木さんの試案では、人口格差は2.3倍に、住民1人あたりの予算額の格差は単純に合算した場合、約2倍に抑えられる。一方、合併で区が大きくなると住民の声が行政に届きにくくなる懸念もある。
<大阪都構想> 大阪市を廃止し、東京都のような特別区に再編する構想。2015年の住民投票では僅差で否決され、当時の大阪市長で提唱者の橋下徹氏は政界を引退した。5年ぶりとなる2度目の住民投票では、4特別区への再編案への賛否が問われる。賛成多数で可決された場合、25年に移行する。
 文・岡本太/写真・戸田泰雅
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