<ふくしまの10年・地図に残してはいけない仕事>(5)住民も職員も苦しんだ

2020年10月31日 06時39分

原発周辺の家屋を解体しながら、中間貯蔵施設は拡張を続けている=福島県大熊町で

 国への不信感を募らせる避難住民に、家屋の除染に同意してもらったり、削り取った汚染土を仮置きする場所を提供してもらったりするのは一筋縄ではいかなかった。
 「朝五時に事務所を出て、遠隔地の避難住民を訪問するのですが、同意のはんこをもらえず深夜事務所に戻ってきた職員のなかには、疲労と焦りから机をたたいたり、いすを引き倒したりして苦しむ者もおりました」
 福島環境再生事務所の除染推進チーム次長だった小沢晴司さん(59)はこう振り返る。
 その後、汚染土は東京電力福島第一原発の周辺に整備する中間貯蔵施設で集中的に貯蔵することになったが、その用地確保も難航を続けた。
 計画地は約千六百ヘクタールと、東京の中野区や渋谷区ほどの広さ。八割を民有地が占め、地権者は全国で二千三百人以上いる。実際の地権者がはっきりしない土地も少なくなかった。約百人の職員が手分けして交渉に当たったが、地権者の反応は冷たかった。
 「どうして故郷から離されたうえに、土地を売らなければいけないのか」
 「『中間貯蔵』と言いながら、ここを最終処分場にする気なんだろう」
 地権者にはこんな思いがうずまいていた。土地の買い取り価格が低かったほか、国が土地の国有化にこだわったことも用地確保を遅らせた。
◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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