履歴書に性別や年齢、写真は要らない? 削除を求める声と企業側の事情

2020年10月31日 14時00分

厚生労働省の担当者(右)に履歴書から性別欄、年齢欄、顔写真の削除を求める署名をそれぞれ提出した有志たち=東京都千代田区の参議院議員会館で

 履歴書に性別欄や年齢欄、顔写真はいらない―。性的少数者や病気などで外見に特徴がある人たちが、それらの記載により差別的な対応をされるとして、履歴書から欄を削除するよう国に対応を求めている。一方、応募者の個人情報を企業側が事前に把握するのは、入社後のミスマッチを防ぐために大切だ。差別は許されないが、記載をなくしても支障はないのか。国も慎重に考えている。(神谷円香)
 「性別を尋ねる合理的理由はない」「顔採用はやってません、と言うのに、なぜ顔写真が必要」「年齢をネガティブに利用されるのを制限して」。今月8日、履歴書から性別欄と年齢欄、顔写真の削除を求める署名計約2万4000人分を厚生労働省宛てに提出した有志たちが要望書を読み上げた。
 先天的にメラニン色素が欠乏し肌や髪が白っぽくなる「アルビノ」の当事者で立教大の矢吹康夫助教は、「見た目が問題になるところでは働けない」と考えてしまう人もいると指摘。「履歴書を求められない求人しか応募せず、選択肢を狭めている」と、顔写真を不要とするよう訴えた。

厚生労働省の担当者に、履歴書から顔写真の削除を求める理由を説明する矢吹さん(中央)

 2月末、性別欄をなくす署名運動がインターネットで始まり、3月に年齢欄、9月からは顔写真をなくす署名も始まった。工業製品の規格をつくる日本規格協会は7月、運動を受け履歴書の様式例から性別、年齢、顔写真の欄があるものを削除した。ただ実際に企業がどんな様式を使うかはそれぞれの判断による。
 署名を受け取った厚労省の担当者は「どこまでなら理解されるかを整理しているが、拙速に決めてどこかに不利益が出るのも避けなければならない」と話した。海外では、性別欄に男女以外の回答欄を設けたり、顔写真貼付を求めないのが一般的な国もあったりする。担当者はさまざまな例を調べ、顔写真をなくした場合、どのように本人確認をするかなどを検討していくとしている。
 企業は履歴書から応募者の何を得ようとするのか。人材サービス会社「エン・ジャパン」で転職支援を担当する藤村諭史マネージャーは「差別にならないよう企業も当然努力するべきだ」とした上で、「履歴書は本来、自分の良いところを示すもの。何かが不利になるならば補完してプラスに」と助言する。
 顔写真は、明るい笑顔なら好印象を与えプラスの材料になる。接客を伴う仕事では、外見の特徴で不利になる人がいるのは事実と言うが「気にしないと公言する企業もある」。性別は、企業がジェンダーバランスを改善し、男性が多い職場にあえて女性を入れるなど、多様性ある組織をつくるためにむしろ必要。年齢も同様だ。
 本来は面接も通じて丁寧に選考をすべきだが、新卒一括採用がまだ主流の日本では、数多くの履歴書を一気に見なければならない企業側の負担もある。藤村さんは「自由な様式で集めると情報が集まらず効率が良くない。まずは選考方法を変えないと」と指摘した。

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