大統領選で日本の巨額負担はどうなる? 「思いやり予算」交渉開始も日米様子見

2020年11月1日 05時50分
 2021年度から5年間に日本が負担する在日米軍駐留経費(思いやり予算)を決める交渉が、10月に始まった。20年度までの負担額を定めた協定は来年3月に失効する。日本政府は巨額の負担増を求めるトランプ米大統領の出方を警戒するが、11月の大統領選の行方が見通せず、選挙結果が出るまでは日米とも様子見の構えだ。(上野実輝彦)

◆初回は具体的内容に踏み込まず

 「今後の協議を進めるための枠組みづくりだ」。日米外交筋は、10月中旬に始まった実務者交渉の意義をこう語った。
 外務、防衛両省の発表では交渉は「準備会合」との位置付け。公表内容も「同盟に対する相互の貢献について考えを述べ合い、正式交渉の時期や在り方について調整を進めることで一致した」ことのみ。実質的な進展の説明はなかった。
 日米双方が初回の交渉で具体的な要求に踏み込まなかったのは、11月3日投開票の米大統領選の行方が不透明なためだ。

◆昨年は「4倍」案を提示 大統領が代われば姿勢も変わる?

 トランプ氏はこれまで、日本を含む同盟国に大幅な負担増を求めてきた。昨年7月に来日したボルトン大統領補佐官(当時)の回顧録によると、米側はこのとき、日本の負担を現在の4倍となる年額80億ドル(約8400億円)に増やす案を提示したという。
 回顧録が出版された今年6月、当時の河野太郎防衛相は増額要求を否定したが「日米の一方が得をしては長く持たない」と、困惑を隠さなかった。
 韓国ではトランプ氏の増額要求と折り合わず、駐留経費を定めた協定が今年3月に失効。米軍基地で勤務する韓国人の給与支払いが滞るなど、混乱が生じた。
 韓国の二の舞いを避けるため、日本政府内に浮上しているのが、年末の予算編成に向け、来年度分の負担額のみ暫定合意する案だ。防衛省幹部は「大統領が代われば、大幅負担増が前提の米側の姿勢も変わる可能性が高い」と期待する。

◆「思いやり予算」以外で増え続ける米軍関係費 識者「数字のトリック」

 1978年度に初めて62億円を計上した思いやり予算は、円高ドル安と米国の財政赤字を背景に急増し、ピークの99年度には2756億円まで伸びた。その後は円高是正や日本経済の低迷で負担額は減少。2015年度からは微増し、現協定の16年度からの5年間は、1900億~2000億円で推移した。
 ただ、思いやり予算の伸びを抑えても、在日米軍関係で日本が負担する額は増え続けている。07年度からは、米軍普天間飛行場の移設や米空母艦載機の移動などにかかる「米軍再編関係経費」が加わり、その後も増加傾向にあるためだ。他に、沖縄の米軍基地問題に関する日米両政府の合意(SACO合意)を具体化するための経費もある。
 日米安保体制を研究する琉球大の山本章子准教授は「思いやり予算の算出だけで米軍関係費を減らしたように見せるのは数字のトリックだ」と指摘している。

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