菅首相答弁ににじむ原発新増設、石炭火力温存の姿勢

2020年11月1日 05時50分

 2050年の温室効果ガス排出「実質ゼロ」を宣言した菅義偉首相は、30日まで3日間にわたる衆参両院の代表質問で「再生可能エネルギーのみならず、原子力や石炭を含め、あらゆる選択肢を追求していく」との答弁を繰り返した。自民党内から原発の新増設を求める声が上がる中、数十年先も原発や石炭火力発電を活用し続ける姿勢をにじませた。(妹尾聡太)

◆「実質ゼロ」目標で原発活用の意思がより明確に

 原発を含む「あらゆる選択肢」で脱炭素社会を目指すとの答弁は安倍政権時代と同じ。だが、温室効果ガス排出の「実質ゼロ」目標を掲げたことで、二酸化炭素(CO2)排出量が少ない原発を活用しようという意思はより具体的になった。
 国内の原発は、建設中も含めて36基。法律上、稼働できるのは最長60年のため、50年には約20基に減り、その多くも数年後には寿命となる。50年に「実質ゼロ」を達成してその後も続けようとすれば、原発の新設や建て替えが視野に入る。
 原発には使用済み核燃料を処分できないなど数々の問題が残ったままだが、自民党の世耕弘成参院幹事長は27日の記者会見で「新技術を取り入れた原発の新設も検討することが重要だ」と主張。加藤勝信官房長官は「現時点で新増設や建て替えは想定していない」と打ち消したが、政府は新型炉の技術開発支援費を予算計上している。

◆「カーボンニュートラル」多用も再生エネルギーには踏み込まず

 一方、首相は代表質問で「カーボンニュートラル」という言葉も多用した。省エネなどでCO2排出量を抑えるとともに、森林での吸収量を増やしたり、排出したCO2を地中に埋めるなどして大気中への排出を「実質ゼロ」にする考え方だ。
 再生エネの拡大もCO2の排出量を削減するための選択肢の1つだが、首相は再生エネに特化した新施策には踏み込んでいない。一方で、火力発電で排出したCO2を、地中に埋めたり化学品の原料に再利用したりする技術の商用化に言及。「石炭火力もカーボンニュートラルに貢献する技術革新を追求していく必要がある」と述べ、石炭火力の全廃に否定的な考えを示した。
 しかし、CO2再利用は高いコストなど課題が多く、実用化が進まなければ脱炭素社会の実現が遠のく恐れがある。

関連キーワード

PR情報