「どこに相談できるのか…気持ち悪かった」 アスリートを悩ます性的画像被害、法整備求める声

2020年11月1日 05時50分
 アスリートが性的な意図で写真を撮られ、インターネット上に掲載される迷惑行為が広がっている。会員制交流サイト(SNS)やスマートフォンが普及した影響が大きく、日本オリンピック委員会(JOC)が対応に乗り出した。ただ、被害は多様で取り締まりには限界がある。いま、何ができるか。(兼村優希)

◆中高生にも拡大

今年の日本選手権女子100メートル決勝で力走する選手=10月2日、新潟市のデンカビッグスワンスタジアムで

 スタート前にお尻を上げた瞬間をアップで撮影。ニュースサイトに載った写真にみだらな言葉を付けて投稿…。「どこに相談すればいいか分からず、気持ち悪かった」。陸上で日本代表経験もある女子選手は振り返る。全国大会で活躍して注目されると、自分の写真に体液をかけたような画像をSNSで送り付けられたこともあった。
 中高生にも被害が広がり、耐えられなくなった一部の女子選手が今夏、「どうにかならないか」と声を上げた。JOCは競技団体へ聞き取りを行い、同様の被害を確認。スポーツ界全体の問題として、全国高等学校体育連盟などと本格的な対策を協議している。
 一連の動きが報道されると、「そういう格好をしている方が悪い」とのコメントも。ぴたっと体に合ったユニホームは、競技力を高めるためのもの。この選手は「競技に一生懸命取り組んでいるだけなのに。女性アスリートへのリスペクトがない」と憤る。

◆いたちごっこ

 被害は2000年ごろから競技団体を悩ませてきた。日本体操協会は04年から一般の観客の撮影を原則禁止に。カメラやスマホでの撮影を認めず、被害の減少につながった。日本ビーチバレーボール連盟も05年ごろから撮影を禁じるようになったといい、17年には女子がより生地の多いユニホームを着られるよう規定を変更した。
 一方、家族やファンを念頭に撮影やカメラの持ち込みを全面的には禁止せずに、被害防止に取り組む例も。陸上では会場に不適切な撮影を禁止する看板などを置き、頻繁に見回りをして不審な人には声をかける。それでも画像は日々ネット上に上がり、いたちごっこの様相だ。
 一度拡散した画像を完全に消し去るのは不可能に近い。選手からは「もっと厳しく取り締まって」と、法整備を求める声も上がる。

◆規制するには

 都道府県ごとの迷惑防止条例で取り締まる「盗撮」は原則、衣服に隠された下着や身体などを執拗に撮影する行為。ユニホーム姿は該当しない可能性が高い。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「(ネット投稿の)事前に規制するのは限界があり、事後に規制するしか有効な手だてはないかもしれない」とし、画像を拡散する行為を取り締まる新たな仕組みづくりを求める。「単なる性欲の対象におとしめ、アスリートの尊厳を傷つけたとして処罰する」という考え方だ。
 例えば、性的画像の流出を取り締まる「私事性的画像記録の提供等被害防止法」(リベンジポルノ防止法)に加えるよう提案し「表現の自由を侵さないよう、実態に合わせて限定的なものをいくつかつくるのが望ましい」と話す。
 法務省の検討会では「盗撮罪」の創設も議論されている。ただ、法体制の整備には時間がかかる。JOCでは「まずは注意喚起し、周りが目を光らせる体制をつくることが必要」と強調。実態を知り、もっと周囲に目を配る。私たちにも、できることはあるはずだ。

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