イスラム教徒反発の中、「表現の自由」「冒瀆する権利」に固執するマクロン氏 世論を意識

2020年11月2日 05時55分

10月29日、襲撃事件があったフランス・ニースのノートルダム教会を訪れ記者団に話をするマクロン大統領=ロイター・共同

 フランスで2週間のうちに4人が殺害された2件のテロ事件を巡り、イスラム教の預言者ムハンマドを描いた風刺画を「表現の自由」として擁護したマクロン大統領らの姿勢とイスラム教徒の溝があらわとなっている。イスラム諸国の反仏感情が過熱し、新たなテロの連鎖が懸念される中、マクロン氏が強硬なまでに表現の自由にこだわるのはなぜか。

◆「第3共和制以来の権利」

 一連のテロの発端とみられているのが、風刺週刊紙シャルリエブドの9月2日付の1面。同日始まった2015年の同紙本社襲撃事件の公判に合わせ、事件のきっかけになったムハンマドの風刺画を再掲載した。
 仏テロ捜査当局は10月下旬の記者会見で「この日以降、インターネット上でイスラム過激派諸組織が報復を呼び掛けていた」と指摘した。

10月30日、レバノンの首都ベイルートで、フランス大使館に迫るデモ隊を警戒する治安部隊=ゲッティ・共同

 9月下旬、5年前の襲撃事件の現場前で男女2人が襲われる刺傷事件が発生。10月16日にはパリ郊外の中学校で同紙の風刺画を生徒に見せた男性教師が殺害された。捜査当局はいずれも実行犯は過激派による報復の呼び掛けに呼応したとの見方を示している。
 マクロン氏はシャルリ紙による風刺画再掲載から一貫して表現の自由を擁護。理由として好んで使うのが「フランスには第3共和制以来、冒瀆ぼうとくする権利がある」という言葉だ。

◆大統領選見据え

 表現の自由はフランス革命の人権宣言に明記され、帝政を経て第3共和制に移行後の1881年に法制化。その象徴が、革命期に絶対王政への冒瀆を笑いに変えた風刺画だった。マクロン氏は、歴史的背景を踏まえ、表現の自由への思い入れが強い仏国民の世論を意識しているとみられる。
 さらには右派の野党勢力から対策が甘いと批判されてきたマクロン氏は1年半後の次期大統領選を見据え新たなテロ対策法案を年内に提案予定。10月上旬にイスラム過激派への対決姿勢を表明した骨子を大々的に発表、その2週間後に教師殺害テロが起きた。

◆背景に右派の圧力か

 「表現の自由の守護者」として一般市民では異例の国葬とされた教師への追悼の辞でマクロン氏が「フランスは風刺画をやめない」と発言。マクロン氏の発言について、仏メディアには右派の野党勢力の政治的圧力が背景にあったとの見方もある。 (パリ・谷悠己)

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