羽ばたく 革新の街 羽田にスマートシティ誕生

2020年11月6日 06時37分
 羽田空港(大田区)の隣にスマートシティ「羽田イノベーションシティ」がオープンした。ITを駆使した「先端」と羽田発の「文化」の融合を軸にした施設だ。イノベーションは物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」などを意味する。終戦直後の悲しい歴史も秘めているエリアがイノベーションを遂げた。
 イノベーションシティは東京モノレール・京急電鉄の天空橋駅の直上。改札口を出ると、さっそく「先端」を感じられる。出迎えてくれたのはセキュリティーロボット。顔認証機能や高温物体検知などの機能を備え、異常時にはサイレンやフラッシュライトが鳴動する。他にも掃除ロボットや配膳ロボットが施設内を動き回る。駐車場と施設間は運転手なしの自律走行バスが結び、電気自動車がお年寄りらを運ぶ。

荷物を運んでくれる追従運搬ロボット「サウザー」

 建物は航空法による高さ制限により西側から東側に向けて低くなる造り。屋上にはB滑走路などを望める足湯があり、ノンビリと足を湯につけながら、離着陸、駐機中の飛行機をながめられる。

飛行機を眺められる足湯スカイデッキ=いずれも大田区の羽田イノベーションシティで

 もう一つのコンセプト、「文化」を担うのは羽田を現代の出島になぞらえたデジタル体験型施設「羽田出島」。「日本が開国しないまま、技術や産業が発展を遂げていたら」という設定で、約三十分のストーリー「ザ・ハート・オブ・ジパング」を上演している。観客は専用のゴーグルを着けて入場。七部屋の壁面にCGを駆使した映像が投影され、白狐などと名付けられた四人のパフォーマーも登場し、「もうひとつの日本」を描き出す。
 手掛けたのは人工知能(AI)技術を駆使したサービスの開発やイベントのデジタル演出を行うワントゥーテン(本社・京都市)。澤邊芳明社長(47)は「日本のエンターテインメントを世界に発信したいと『出島』と名付けたら、コロナ禍で実質的な鎖国状態になってしまった」と振り返り、「名称の重みをあらためて感じ、日本経済復活のサポート施設にしたい」と訴える。

羽田出島ではデジタルを駆使した映像とパフォーマンスを楽しめる(ワントゥーテン提供)

 日本の伝統文化や食文化を発信する商業施設、ホテルなども併設。二〇二二年には先端医療研究センターなども完成予定だ。第1〜第3ターミナルと無料バスで結ぶことも検討され、「羽田空港で一日過ごせる」を担う。
 羽田出島の入場料は高校生以上が当日3850円、前売り3190円、こども(4歳から中学生)が同1650円、同1100円。

◆敗戦で強制立ち退きの歴史 顕彰碑も

 この地には1931(昭和6)年、逓信(ていしん)省が国内初の国営民間航空専用空港「東京飛行場」を開港。39年、ニッポン号が世界一周飛行を達成、国内外に航空路線が延びた。
 かつては漁師町で、羽田鈴木町、羽田穴守町、羽田江戸見町の旧3町があった。しかし太平洋戦争敗戦後の45年9月21日、連合国軍総司令部は飛行場を接収・拡張するため、突然、地域住民に48時間以内の強制立ち退きを命令。約3000人が代替地もなく、着の身着のままで移住を余儀なくされた。
 52年に大部分が返還され、東京国際空港として首都の空の玄関に。一方で航空機の大型化、離着陸回数の増大に伴い、周辺住民の航空機騒音が大きな社会問題化した。
 一帯は2014年、国家戦略特区に選定。羽田空港に隣接した跡地利用の一環として、大田区は15年7月に「大田区と日本の経済成長に寄与するまちづくり」の整備方針を定め、先端産業分野の企業誘致、区内の中小企業と最新テクノロジーの融合、文化とアート産業の創出などを重点プロジェクトとして盛り込んだ。17年、鹿島(本社・港区)を代表企業とする9社の企業グループのプランが公募で選ばれた。
 バスが発着する交通広場の一角には「羽田の歴史の伝承」を伝える「旧三町顕彰の碑」=写真=が立つ。訪問時はこの碑に立ち寄り、ぜひ歴史を振り返ってほしい。
 文・加藤行平/写真・戸田泰雅、隈崎稔樹
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