団地の高齢者に新たな「足」 日立で低速電動車実証実験

2020年11月6日 07時17分

実証実験で団地内を走る電動車=日立市で

 高齢者が車の運転免許を自主返納するケースが増える中、通院や買い物などで気軽に使える交通手段の確保が全国的な課題になっている。高齢化が進む日立市金沢町の金沢団地では、低速で走る電動車の実用性を調査する実証実験が始まった。市は、新たな地域住民の足として期待を寄せる。(松村真一郎)
 「普段は歩いているが、上り坂がつらい。これなら安心して乗れるので、また使いたい」
 実証実験が始まった二日、初めて電動車に乗った田所和子さん(79)は満足げに話した。免許返納を考えているという。
 電動車は、ゴルフカートのような車両で「グリーンスローモビリティ」と呼ばれ、公道を時速二十キロ未満で走行。国土交通省と環境省が、環境に配慮した次世代の移動手段として推進している。
 実証実験は、市や住民などでつくる「金沢団地グリーンスローモビリティ活用委員会」が二十九日まで実施する。四人乗りの電動車二台が、郵便局や商店が隣接する団地の集会所を起点に、東西南北四つのルートを周回する。
 実験期間中は集会所と団地外のスーパーやドラッグストアを往復する乗り合いタクシーも運行。電動車は無料だが、タクシーは一回百円。フリー券(千円)を購入すれば乗り放題になる。
 金沢団地は一九七五年に完成。約三〇・五ヘクタールの敷地には一戸建て住宅が立ち並ぶ。現在、七百三十戸二千二百人ほどが住むが、高齢化率は50%を超えている。市南部の山側斜面に造成しただけに、高齢者が徒歩で移動するには負担が大きい。車を持たない高齢者は、団地内をタクシーで移動することもあるという。
 不便な交通事情を解消しようと、市や団地住民らが電動車の導入を検討。千葉市や北九州市など全国の五地域とともに、国交省の本年度の実証調査地域に選定された。
 市は利用状況などを基に、継続な運行を検討する。活用委員会の高井勉委員長(73)は「自家用車に頼らない交通手段の確保を皆さんと一緒に考え、実際の運行につなげていきたい」と意気込む。
 市によると、市内には十三の団地があり、多くは一九七〇年代までの高度成長期に造成された。一方、市内での運転免許返納数は年々増えており、昨年十二月末時点で八百五十三人が返納した。
 金沢団地が高齢化に伴って抱える課題は、ほかの団地にも共通する。市都市政策課の担当者は「今回の実証実験で、ほかの団地にも通じる『交通弱者』を救う方法を考えたい」と話している。

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