17年には学術会議側と事前協議 首相、候補者の推薦前に<任命拒否問題>

2020年11月7日 05時50分
 菅義偉首相は6日の参院予算委員会で、日本学術会議の新会員任命に関し、会員の半数が改選された2017年には、同会議が候補者を推薦する前に、政府との間で事前協議を行ったことを明らかにした。
 事前協議について、首相は「任命にあたっての(政府の)考え方を話し、意見交換を行った」と説明。加藤勝信官房長官は「意見交換を踏まえて学術会議が自身の判断で推薦名簿を出した」と述べた。
 日本学術会議法は会員の人選について、同会議の推薦に基づき、首相が任命すると定める。質問した共産党の小池晃書記局長は「(推薦への)政治介入そのもので、学術会議の独立を脅かしている」と批判した。
 首相は前日の5日の参院予算委で、20年の会員任命では事前協議がなかったと説明し「推薦前の調整が働かず、結果として任命に至らない者が生じた」と主張した。(山口哲人)

◆除外の理由かたくなに説明せず、拒否の根拠も不明確なまま

 6日まで4日間にわたった衆参両院の予算委員会は、日本学術会議の新会員任命拒否問題が主要な論戦のテーマになった。会員の人選を巡る背景や経緯で判明した部分もあるが、菅義偉首相は6人除外の理由をかたくなに説明せず、任命を拒否できる根拠も不明確なままだ。
 「人事に関することなので答えは差し控える」
 首相は答弁でこのフレーズを連発した。6人が安全保障関連法など、政府の政策に異論を唱えていたこととの関連性は否定したが、任命拒否の理由についてはゼロ回答に終始。立憲民主党の枝野幸男代表は「壊れたレコード」と皮肉った。
 一方、人事の検討過程の一端は明らかになった。首相は会員の半数が改選された2017年、学術会議が推薦リストの提出前に政府と事前協議を行ったと説明。「今回は推薦前の調整が働かず(6人の)任命に至らなかった」と述べ、官邸側の意向を聞き入れなかった学術会議に責任があるとの認識をにじませた。
 除外する6人の人選が、首相ではなく杉田和博官房副長官を中心に進められたことも浮き彫りになった。首相は審議で、当初の105人の推薦リストを見ておらず、除外した6人のうち5人の名前や業績も知らなかったと認めた。これに対し、杉田氏は最終的に任命した99人のリストを作成する前、会員構成の偏りなど首相の問題意識を踏まえ、内閣府と協議していたことが判明した。
 日本学術会議法は首相を任命権者と定めている。官僚が実質的に判断していれば、任命権を形骸化させかねない。野党は「杉田氏に6人を削れる権限はない」(立民の蓮舫参院議員)と反発し、国会招致を要求。内閣府との協議内容を記録した内部文書の公開も求めたが、政府・与党はいずれも応じなかった。
 首相の任命拒否の根拠も焦点になった。1983年に会員の選考方式を選挙制から任命制に変えた法改正時の国会審議で、当時の首相や担当閣僚らが、首相の任命権について「形式的にすぎない」という答弁を繰り返していたからだ。
 今回、政府が任命拒否を正当化するのに持ち出した「推薦通りに任命する義務があるとまでは言えない」という見解について、首相は「(83年から)一貫した考え」と主張した。しかし、根拠としたのは2018年に内閣府が内閣法制局と協議してまとめた内部文書。それ以前も同様の見解だったことを証明する記録や文書は示せなかった。
 共産党の志位和夫委員長は「2年前にこっそり解釈変更したことがはっきりした。法の安定性も何もなくなる」と批判した。(木谷孝洋)

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