東京五輪に向け、PCR検査に新たな課題「偽陽性」 体操の内村航平 8日開幕の国際大会出場へ
2020年11月8日 06時00分
東京五輪の開催に欠かせない新型コロナウイルスのPCR検査を巡り、新たな課題が持ち上がった。8日に東京で開かれる体操の国際大会に出場する内村航平(リンガーハット)がいったん陽性と判定されながら、再検査で陰性となった問題。東京五輪で同様の事態が起きれば、選手の心身への影響はもちろん、誤った結果で出場を逃すアスリートも出てきかねない。(佐藤航)
◆唾液検体から陽性判定で隔離、トレセンは閉鎖→再検査は陰性
「今回は新たに『偽陽性』という課題への対応に直面した」。国際体操連盟(FIG)の渡辺守成会長は10月31日、問題を受けた声明で検査の難しさをにじませた。
五輪延期以降、五輪種目では初めて日本に外国人選手を招く国際大会。来夏への試金石と位置付けられ、徹底した感染症対策が講じられている。選手30人はPCR検査が義務付けられ、日本チームで合宿中だった内村も10月21、28日に唾液の検体を提出。28日の検査で陽性が出て隔離され、合宿地の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の体操場も閉鎖された。
ところが30日の再検査では検体を調べた三つの病院でいずれも陰性となり、FIGは「偽陽性」だったと判断。日本チームは1日から練習を再開し、内村も予定通り大会に出場することになった。
◆調整中断、五輪出場の機会が奪われる可能性も
今回は大会1週間前だったことと、すぐに再検査の結果が出たため、練習への影響は最小限に抑えられた。だが、最終調整を中断された選手や、「陽性」と告げられた内村の精神面への影響は小さくないだろう。
1万人超のアスリートが来日予定の東京五輪では、入国前から入国時、来日期間中など小刻みにPCR検査を行うことが検討されている。「偽陽性」が試合前日などに出てしまえば、出場権を勝ち取って大舞台に臨むはずだった選手が、その機会を奪われる事態も想定される。混乱が生じれば、ほかのアスリートへの動揺も広がる。
◆「抗体検査の併用も一つの手段」
愛知医科大の三鴨広繁教授(感染症学)は偽陽性の一因として「唾液の検体は不純物が混じりやすい」と分析する。医療従事者が被検者に近づいて鼻の奥から検体を採取する方法と比べると、二次感染のリスクは低い一方、精度がやや下がることも考えられるという。
ただ三鴨教授は、「PCR検査より精度の高い検査がない現状では、偽陽性の問題はあってもPCRを使う以外に手はない」と指摘。大会前から定期的な検査を繰り返すほか、病原体に感染した時に生じる「IgM」と呼ばれる抗体の検査の併用も、「(精度を上げる)一つの手段として考えられる」としている。
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