【バイデン氏勝利宣言演説・全文完訳】「アメリカの魂を取り戻す」<アメリカ大統領選>

2020年11月12日 20時32分
 米大統領選での当選が確実となった民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)が現地時間7日午後8時(日本時間8日午前10時)すぎに、地元の東部デラウェア州ウィルミントンで「勝利宣言」の演説を行いました。「結束を目指す大統領になります」と誓ったこの演説。東京新聞版の全文完訳をお届けします。

7日、米デラウェア州ウィルミントンで勝利宣言し、手を振る民主党のバイデン前副大統領とジル夫人(AP)

◆「赤い州」「青い州」などない

 皆さん、この国の皆さんはその意思を示しました。私たちに明らかな勝利をもたらしてくれました。誰もが納得できる勝利です。アメリカの国民にとっての勝利です。私たちは、アメリカ大統領選史上で最多の7400万もの票を獲得しました。驚かされました。今夜、この国の隅々まで、そして実に世界中に喜びがあふれています。明日は信頼が取り戻されるという希望です。それによって、よりよき日がもたされるのだと。
 私は謙虚に受け止めさせていただきます。皆さんが私を信頼し、信認を与えてくださったことをです。私は、分断でなく、結束を目指す大統領になることを誓います。(共和党支持の)赤い州、(民主党支持の)青い州、などというものは存在しません。あるのは一つの合衆国だけです。すべての皆さんの信頼を得られるよう、全力を尽くします。
 私が信じるアメリカをアメリカたらしめるものは何でしょうか。それは皆さんです。私たちの政権にとっては皆さんがすべてなのです。私が大統領を目指したのは、アメリカの魂を取り戻すためです。この国の屋台骨である中間層を立て直し、世界中で再びアメリカが尊敬されるようにするためです。そしてこの地で私たちを結束させるためです。こんなにも多くの皆さんがそんな理想像に賛同して投票してくださったことは、私の一生にわたる名誉なのです。今こそ、その理想像を現実にするのが仕事です。私たちの任務なのです。

◆「私はジルの夫です」

 皆さん、私は繰り返し口にしてきました。私はジルの夫です。ジルや、息子のハンター、娘のアシュリー、そしてすべての孫やその伴侶たち。私の家族全員の愛や献身的な支えがなければ、私はここには来られなかったに違いありません。彼らは、私の心そのものなのです。
 ジルは母親です。軍人の子を持つ母親です。そして教育者でもあります。人生を教育に捧げてきました。教育は単に彼女の仕事ではなく、彼女そのものです。この国の教育者の皆さんにとって、今日は大きな意味を持ちます。皆さんの仲間の一人がホワイトハウスに入るのです。ジルはきっと素晴らしいファーストレディーになるでしょう。私は彼女をとても誇りに思います。

◆「ハリス夫妻は私の家族」

 私はまた、すてきな副大統領と働く名誉を手にします。今、皆さんがその演説を聴いたばかりのカマラ・ハリスです。彼女は歴史をつくりました。黒人の女性として最初の、南アジア系の女性として最初の、そして移民の娘として最初の、この国の副大統領に選ばれたのです。
 そんなことはアメリカで不可能だ、なんて決して言わないでください。長く懸案だったことです。今夜、その実現のために長年にわたり懸命に闘ってきた人たちのことを、思い起こさざるを得ません。アメリカはモラルの世界を再び正義の方へ向けたのです。
 カマラ、そして彼女の夫のダグ、好むと好まざるとにかかわらず、あなたたちは私の家族です。事実上、バイデン家の一員になったのです。もう逃れられません。

◆同性愛者も、トランスジェンダーも…

 新型コロナウイルスの大流行の最中、選挙のために働いたボランティアや係員の皆さん、地域の選挙管理に従事した皆さんは、この国全体から感謝されなければなりません。そして私の選挙陣営のスタッフ、そしてボランティアの皆さん、この瞬間が訪れるために尽力してくださった皆さん、私の勝利は皆さんのおかげです。すべては皆さんのおかげなのです。

7日夜、バイデン氏が勝利演説をしたデラウェア州ウィルミントンの会場周辺で、花火を見上げる人々=杉藤貴浩撮影

 さらには私たちを支持してくださった皆さん、私たちが立ち上げ展開した選挙運動を誇らしく思います。私たちが築いた連携が誇らしいのです。歴史上で最も広範囲な、最も多様な連携でした。民主党員、共和党員、無所属の皆さん、そして進歩派、穏健派、保守派の皆さん。若者も、お年寄りも、都市に住む皆さん、郊外の皆さん、地方で暮らす皆さん。同性愛者も、異性愛者も、トランスジェンダーの皆さんも。白人、ラテン系、アジア系、ネイティブアメリカンの皆さん。そんな連携です。とりわけ、選挙運動がどん底に陥ったとき、黒人の皆さんのコミュニティーが私のために再び立ち上がってくれました。
 皆さんはいつも私を支えてくれました。今度は私が皆さんを支えていきます。選挙戦の最初に申し上げたように、私はこの選挙戦でアメリカらしさを体現したいと思ってきました。実際にそうしました。これからは政権がそう見えてほしいし、そうなるよう行動していきます。

◆「癒やしの時です」

 トランプ大統領に投票した方々は今夜、とてもがっかりされていることでしょう。私自身、何度か選挙で負けたことはあります。でも、お互いにチャンスを与え合おうではありませんか。ののしり合いをやめ、頭を冷やし、互いを見つめ直し、互いの言葉に耳を傾け合う時が来たのです。前に進むためには、相手を敵とみなすことをやめなければなりません。敵ではなく、アメリカ人です。みなアメリカ人なのです。
 聖書は「なにごとにも時がある」と説きます。「建てる時、植えたものを抜く時、植える時、癒やす時」。アメリカは今、まさに「癒やす時」です。

◆まずはコロナ対策から

 選挙戦は終わったのです。人々が何を望み、私たちは何を託されたのでしょうか。私はこう信じています。品格、公正、科学、そして希望の力を結集して闘うために、アメリカ国民が私たちを求めたのだ、と。ウイルスを制御するための闘い。繁栄を築くための闘い。家族の健康を守るための闘い。この国にある構造的な人種差別を根絶するための闘いです。
 私たちの地球を気候変動から守るための闘い。品格を取り戻すための闘い。民主主義を守り、すべての国民に平等な機会を与えるための闘い。求められているのは、平等な機会、それだけです。
 皆さん。私たちはまず、新型コロナウイルスを制御することから始めます。ウイルスを制御できないことには、経済を立て直すことも、活力を取り戻すこともできません。誕生日や結婚式、そして卒業式など、人生の最も重要な節目を祝ったり、子どもや孫を抱いたりといった最高の瞬間を楽しむこともできません。次の月曜日(2020年11月9日)、私は最前線の科学者と専門家のグループを政権移行のアドバイザーに指名します。「バイデン・ハリス COVID計画」を(就任初日の)2021年1月20日から実行に移すべく、設計図を描いていきます。科学的見地に基づいて構築されます。それは思いやり、共感、気づかいの行き届いたものになるはずです。この大流行を好転させるため、私は、あらゆる努力や献身を惜しみません。

◆「多くの夢がかなえられずにきました」

 皆さん、私は誇り高き民主党員です。けれども、アメリカの大統領として国を治めます。私に投票しなかった皆さんのためにも、私に投票してくれた皆さんのためにするのと同じように、精いっぱい働きます。アメリカの中で互いを悪魔に見立てるような嫌な時代は、今ここで終わりにしましょう。民主党員と共和党員が互いに協力を拒むのは、制御できない不思議な力のせいではありません。
 私たちが決め、選んだことなのです。協力しないと決められるのであれば、協力しようと決めることもできるはずです。アメリカの国民が私にそれを託したのだと信じています。
 国民の利益のために協力することを国民は望んでいます。それこそが私の選択です。連邦議会でも民主党議員と共和党議員が私と同様の選択をしてくれるよう求めていきます。アメリカの歴史は、ゆっくりと、けれども着実に、アメリカで広がってきたチャンスそのものです。でも、間違えてはいけません。あまりにも多くの夢が、あまりにも長い間、かなえられずにいます。私たちはこの国が約束することを、すべての人にとって現実のものとしなければなりません。人種、民族、信仰、出自、そして障害の有無に関係なく、すべての人にです。

◆転換点こそ国をつくる

 アメリカは常に、転換点によって形づくられてきました。私たちは何者なのか、私たちはどうなりたいのかをめぐり、難しい決断をした時によってです。
 1860年のリンカーンは連邦を救いました。1932年のフランクリン・D・ルーズベルトは困難な状況に陥ったこの国にニューディール政策を約束しました。1960年のジョン・F・ケネディはニューフロンティア政策を誓ったのです。そして12年前、バラク・オバマが歴史をつくった時には、「Yes, we can. (私たちにはできる)」と唱えました。
 私たちは再び転換点にいます。絶望に打ち勝ち、繁栄と目標に満ちた国家をつくる機会が私たちにはあります。私たちにはできます。できることがわかっています。

◆アメリカは「可能性」の国

 私はずっとアメリカの魂のための闘いだと言ってきました。アメリカの魂を取り戻さなければなりません。私たちの国は、善き天使(良心)と暗黒の衝動との絶えない闘いによって形づくられてきました。今こそ善き天使が打ち勝つ時です。
 今夜、全世界がこの国に注目しています。最善のアメリカは地球の指標になると、私は信じます。そして、私たちの力を見せつけることによってではなく、私たちが見本となることの力によって導いていくのです。
 アメリカは一つの言葉で定義できるといつも考えてきました。「可能性」です。アメリカではすべての人が自分の夢をかなえる機会を与えられるべきであり、神が与えてくれた力がそれを実現します。私はこの国の可能性を信じています。私たちは常に前を見据えています。より自由で公正なアメリカへ。尊厳と敬意ある仕事を生み出すアメリカへ。がんやアルツハイマーなどの病を治すアメリカへ。誰も置き去りにしないアメリカへ。決してあきらめず、屈しないアメリカへ。
 アメリカは偉大な国です。そして素晴らしい人々。これがアメリカです。私たちが力を合わせれば、できないことなどありませんでした。

◆「聖歌のことを考えました」

 選挙戦の最後の日々に、私はある聖歌のことを考えていました。私自身と家族、特に亡くなった息子ボーにとって大切な聖歌のことをです。それは私を支える信念を、アメリカをも支えると私が信じる信念を表しています。それが今年恐ろしいウイルスで愛する人を亡くした23万にも及ぶ家族の心を癒やし、慰めとなることを願います。お一人お一人に私は心を寄せます。この聖歌が皆さんの慰めになることを祈ります。
 “なんじは鷲の翼の上に導かれ、夜明けの息吹に包まれて、太陽のごとく輝き、神の御手に抱かれる”
 今こそ一緒に、鷲の翼の上で、神と歴史から託された仕事を始めましょう。全身全霊をかけて、アメリカとお互いを信じ、国を愛し、正義を切望しながら、私たちが目指す国になりましょう。結束した国、より力強い国、傷の癒えた国。
 皆さん、アメリカ合衆国では、私たちがやろうとしてできなかったことは、かつて一つもなかったのです。私が子どもの頃に育ったスクラントンで、出かける時に祖父が言った言葉を思い出します。「ジョー、信じるところを貫け」と。すると、当時生きていた祖母が叫んだものです。「そうじゃないわ、ジョー。信じるところを広めるのよ
 信じるところを広めましょう。神は皆さんすべてを愛しています。アメリカに神の祝福がありますように。私たちの軍隊にも神のご加護がありますように。ありがとうございました。

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