「障害を受け入れられなくて良い」 車いすの女性がアイドルグループを発足

2020年11月11日 05時50分

メンバーで写真撮影に臨む、アイドルグループ「GRITTER」の(左から)りさささん、麻生真里さん、みっちーさん=東京都杉並区で

 10年前の交通事故が原因で車いす生活を送る東京都在住のタレント、麻生真里さんが9月、障害者と医療従事者でつくるアイドルグループ「GRITTER(グリッター)」を結成した。「私のように障害を受け入れていなくても、新しいことをやろうと頑張る人がいると知ってもらいたい」と話す。(畑間香織)

◆障害者と医療従事者のアイドルグループ

 10月20日、メンバーは杉並区内のスタジオで宣伝材料用の写真撮影に臨んだ。「リボンのはじっこを持ってみて」「あ、いいね。かわいい」。麻生さんがメンバーに助言する。
 生まれつき耳が不自由なみっちーは唇の動きを読み取り、音声を出す口話で「活動が始まると実感してわくわくする」と表現した。
 現在は麻生さん、看護師の「りささ」、精神保健福祉士の「みっちー」の3人。さらにメンバーを増やし、ライブハウスや福祉施設、病院での活動を目指す。当面は関東地方を活動の中心にする。
 「いずれアイドルグループ『AKB48』のように、各地域のメンバーが地元に密着して活動するグループに」。世界進出の野望も抱く。麻生さんは「アイドルになりたい障害者が、『入ってみたい』と思うグループにしたい」と話す。

◆「今すぐ殺してよ」と泣き叫んだ10年前

ライブで歌う事故前の麻生真里さん(本人提供)

 麻生さんはラジオパーソナリティーやバラエティー番組出演などタレント活動をしていた2010年4月、都内で歩行中に車にはねられ、脊髄と胸椎を損傷した。事故の記憶はない。下半身不随で2度と歩けないと医師に告げられ、「何で助けたんだよ」「今すぐ殺してよ」と自暴自棄になり、泣き叫んだという。入院生活は1年に及んだ。
 背中には長さ50センチの手術痕が残る。感覚がないはずの両足は神経障害性疼痛のため、えぐられるように常に痛む。10種類の薬を飲んでも眠気より痛みが勝り、熟睡できない。整っていた歯並びは痛みをこらえるあまり、ゆがんだ。
 車いす対応の会場は少なく、ライブをあきらめていたが、12年11月、バンド仲間が復活ライブを企画してくれた。ファンに「助かって良かった」と泣きながら言われ、うれしかった。何よりバンド仲間が事故前と変わらずに接してくれたときに感じた心のぬくもりを、他の人にも感じてもらいたいと考え始めた。

◆「つらい事もいずれ過去に」

 一方で、福祉や障害者に特化した番組に呼ばれることに違和感を覚えた。「初対面でメガネをかけるかどうかを聞かないように、障害を強調する必要がない社会を目指したい」と思うようになった。
 障害者が芸能活動する場を増やしたいと、復活ライブの前後からアイドルグループの構想を練っていた。麻生さんが生活する上で「絶対に欠かせない人」である医療従事者と一緒に物事に取り組んで感謝を伝えるためにメンバーに加えた。入院中に親しくなった看護師やヘルパーと規則上、私的に連絡先を交換できず、関係が終わることにもどかしさを感じていた。
 事故直後の絶望した気持ちはもうない。でも歩けたら良いのにと思う。「障害を受け入れられない気持ちを否定しなくて良い」。こう捉えられるようになったからこそ、麻生さんは今回動きだした。「時間は平等に流れ、つらい事もいずれ過去になる」
 今後の活動など、問い合わせはGRITTERのツイッターへ。

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