「お帰りなさい、米国」 トランプ氏を早々に見切った各国 軌道修正に期待

2020年11月10日 06時00分
<分断から融和へ バイデン氏の課題(上)>

 米大統領選で民主党のバイデン氏が勝利し、第46代の大統領に就任する見通しになった。分断が深まる米国で、融和を訴えるバイデン氏の重要政策や課題を探る。

 米大統領選を制した民主党のバイデン前副大統領(77)は7日夜、地元の東部デラウェア州で勝利演説。約20分の力強い演説が終わった直後、お祝いの花火が打ち上げられ、バイデン氏は家族や大勢の支持者とともに夜空を見上げた。
 その花火が終わらないうちに、バイデン陣営には各国首脳から次々と祝福のメッセージが届く。ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領…。「米国第一」主義に反発していた欧州各国の反応は素早く、パリのイダルゴ市長はツイッターに「お帰りなさい、米国」と書き込んだ。

7日、米デラウェア州ウィルミントンで勝利宣言した民主党のバイデン前副大統領(右)とハリス上院議員=AP

 トランプ大統領(74)は「この選挙はまだ終わっていない」と主張。しかし、世界を混乱に陥れたトランプ氏に対し、各国首脳は早々と見切りをつけて包囲網をつくり、「レッドカード」を突き付ける形になった。

◆温暖化、核軍縮…国際協調へ

 バイデン氏が掲げる「国際協調」の中でも、急務なのは新型コロナウイルスへの対策だ。トランプ氏は世界保健機関(WHO)脱退を表明したが、米調査機関による世界13カ国の調査では、米当局のコロナ対策に批判的な回答が85%に上り、バイデン氏による軌道修正に期待が集まる。
 地球温暖化対策も待ったなしだ。トランプ政権が4日に離脱した国際枠組み「パリ協定」について、バイデン氏は復帰を明言。「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出の実質ゼロ」を公約に掲げ、国際社会と足並みをそろえる。
 核軍縮は、最大の核保有国が指導力を発揮しなければ前進しない。バイデン氏は「核なき世界」を強調してきた。理想が米国を今すぐ動かす状況にはないのは確かだが、これまでの「自国第一」の争いの中では、核の軍拡競争が加速する現実があった。

◆コロナが収束しなければ影響は五輪にも

 トランプ氏の「米国第一」主義は、大統領選が近づくにつれ「再選第一」に変質。コロナ対策では経済活動の再開を急ぐあまり、WHOが奨励するマスク着用を無視するかのように毎日4回、5回と数千人の大規模集会を繰り返した。
 米国の新型コロナ感染者は約1000万人で、死者は24万人に迫る。バイデン氏が世界最悪の感染拡大を収束に向かわせることができなければ、米国がけん引する世界経済の回復も難しい。来夏の東京五輪・パラリンピック開催にも影響を与えかねない。
 対中国の安全保障政策は「再選第一」の前に後退しかねなかった。ボルトン元大統領補佐官によると、トランプ氏は習近平国家主席にすり寄って再選への協力を求め、人権問題の制裁を見送ったとされる。米元高官は「バイデン氏の対中政策は、同盟国との関係強化で中国包囲網をつくることだ」と明かす。
 バイデン外交は、国際協調を軽視し続けたトランプ氏の「負の遺産」を打ち消すことから始まる。(ワシントン・金杉貴雄)

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