「あと4年は耐えられない」 バイデン氏の勝利を呼んだ「反トランプ熱」 <アメリカ大統領選>

2020年11月10日 06時00分
7日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアで、バイデン前副大統領の勝利に踊りながら歓喜に沸く市民=共同

7日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアで、バイデン前副大統領の勝利に踊りながら歓喜に沸く市民=共同

 米大統領選で民主党のバイデン前副大統領(77)が7日、共和党のトランプ大統領(74)を破り勝利した。前回大統領選で奪われた東部から中西部にかけたラストベルト(さびついた工業地帯)の激戦3州を全て制したことが、勝利の要因となった。新型コロナウイルスの感染が拡大する中での大激戦で、米国民の「反トランプ熱」がトランプ氏支持の熱気を上回った。(ワシントン・金杉貴雄)

◆ラストベルトで「青い壁」再建

 「4年前に崩壊した『ブルーウォール(青い壁)』を再建した。ペンシルべニア、ミシガン、ウィスコンシン。国の心臓部だ」。バイデン氏は6日夜、早くも勝利を確信していた。演説で誇ったのが、ラストベルトの3州の奪還だった。
 この3州はいずれも1992年以降6回の大統領選で民主党が制し、同党のシンボルカラーから「青い壁」と呼ばれた。自動車や鉄鋼などの工業地帯で、労働組合の白人労働者が多く、民主党の地盤だった。
 4年前。グローバル化の波を受け衰退したこの地域の白人労働者たちを「忘れられた人々」と呼び、怒りを自らの支持に結び付けたのがトランプ氏だった。3州とも得票率1ポイント未満の僅差で奪われた。もし民主党候補ヒラリー・クリントン氏が3州とも押さえていれば、ヒラリー氏が大統領になっていた。

◆バイデン版「米国第一」で奪還

 バイデン氏は今回、ラストベルト3州奪還がかぎとなるとみて、勝負に出た。
 「より良き再建(ビルド・バック・ベター)」のスローガンで、米国製品購入促進などによる製造業復活と雇用増を打ち出した。バイデン氏版の「米国第一主義」ともいえる内容で、トランプ氏は「私の政策を盗んだ」といら立った。
 さらに新型コロナ問題ではトランプ氏が危険性を軽視した結果、収束に失敗し経済を悪化させ大量の失業を生んだと徹底批判。人種問題では差別解消を訴え、融和で社会不安を取り除くことを唱えた。
 戦略は奏功。出口調査によると、前回選でヒラリー氏はトランプ氏に白人男性票で31ポイントもリードされたが、バイデン氏は13ポイント改善。労働者層にあたる非大卒の白人でも、トランプ氏のリードを8ポイント縮小させた。一定の白人労働者の支持を奪い返し、青い壁の再建を成功させた。

◆トランプ熱も上がって歴史的投票率

 バイデン氏は今回、一般投票でオバマ前大統領の記録を上回る米史上最多の7500万票超を獲得。後押ししたのは、バイデン氏の魅力ではなく「反トランプ熱」の高まりだった。
 新型コロナの感染防止を呼び掛けず、人種対立をあおり、国際社会と協調せず、他者を攻撃し嘲笑する…。「トランプ氏があと4年続けるのは耐えられない」。そんな声は前回投票しなかった民主党左派や無党派層からも多く聞かれた。出口調査では、バイデン氏は前回投票しなかった有権者で24ポイント、無党派層でも14ポイントトランプ氏を上回った。
 一方、民主党に政権を奪還されることへの危機感は、左派的な政策を恐れるトランプ支持者にもさらに「熱」を呼び込んだ。トランプ氏の得票も前回を上回り、フロリダやオハイオなど地盤の重要州ではバイデン氏を突き放して勝った。歴史的な高投票率は、米国の分断が生み出した「負の感情」がぶつかり合った結果だった。

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