日本点字図書館 「読みたい」に応えて80年 点訳も担う知の拠点

2020年11月10日 06時59分

2枚重ねの亜鉛板に原稿を入れる「プリント」工程。印刷物に点字が反映される=いずれも新宿区高田馬場の日本点字図書館で

 80年前の今日11月10日、日本点字図書館(新宿区高田馬場)が創立された。今では点字と録音図書を4万5000タイトルそろえる国内最大の点字図書館だ。実は貸し出しのみならず、資料の制作も重要な役割で、目が不自由な人の「読みたい、知りたい、学びたい」に応えようと奮闘している。今年は日本の点字が制定されて130年−。

知識の滝をイメージしたチェーンが下がる日本点字図書館

 トトトト…。点字製作課の一室には、町工場のような機械音が響き渡っていた。活字から点字に翻訳する点訳のため、機械が亜鉛板に突起を打ち込む。この亜鉛板で用紙を挟み、ローラーで圧力をかけると小さな突起がびっしり刻まれた。自治体や企業から受注した資料やカレンダー、教科書なども製作し、事業収入を得ているという。

全自動点字製版機で製作された2枚重ねの亜鉛板

 「職人」ならではの技術も。視覚障害がある職員が点訳された資料を指で読み上げる触読をし、晴眼(目が見える)職員が元資料と照らし合わせていく。常務理事の伊藤宣真(のぶざね)さん(64)は「触読には知識と速さが重要で、点字に慣れ親しんでいる視覚障害者が担っている」と話す。
 三百人が登録するボランティアも活躍。点訳や音声資料づくり、製本にも関わる。ボランティア歴十年の女性は「読者の喜びを思うと、やりがいは大きい」と笑顔だ。
 新たな蔵書は利用者のリクエストなどをもとに、月に一度選ぶ。実用書や料理本のみならず、中には官能小説も。視覚障害者の多くが従事するはり・きゅうマッサージ関連は特に豊富という。
 「普通の図書館とは違いますよ」と全盲の田中徹二理事長(85)はほほ笑む。貸し出し資料は無料で国内外に郵送される。視覚障害者は書店で本を購入するのも難しく、「点字図書館を経由しないと、情報を得にくい」と役割の大きさを説明する。
 IT化も進んでいる。同館が管理するシステム「サピエ」で、全国の点字図書館、公共図書館などの蔵書を調べたり、資料をダウンロードできる。「視覚障害者が入手できる情報量は桁違いに増えた。今後も知の泉として、情報提供に力を入れていきたい」
<点字> 視覚障害者が指先でたどりながら読めるよう、突起を組み合わせた文字。各文字は縦列三つ、横列二つの計六つの位置に点を配置して作る。フランスのルイ・ブライユが考案、日本では一八九〇(明治二十三)年に石川倉次が翻案した。

◆1940年11月10日創立 戦時中も貸し出し

豊島区雑司が谷にあった日本盲人図書館前に立つ本間一夫(日本点字図書館提供)

 日本点字図書館の創立者の本間一夫(1915〜2003年)は、北海道出身。5歳で髄膜炎により失明するも、少年雑誌や児童文学を読み聞かせてもらい、読書好きに成長した。
 関西学院大卒業後の1940年11月10日、豊島区雑司が谷の借家に「日本盲人図書館」を創立。蔵書の点字図書700冊のほとんどは、私財を投じて買い集めた。翌年には現在の新宿区高田馬場に移転した。
 本間の活動に共鳴した社会教育家の後藤静香(せいこう)が点訳奉仕運動を広め、古今東西の名著の点訳が集まった。43年、図書館棟が落成。
 戦時中は本間が資料を茨城や北海道へ疎開させ、郵送での貸し出しも継続。空襲で全焼した図書館棟は48年に再建され、日本点字図書館と名を改めた。現在は社会福祉法人が運営し、視覚障害者のための日用品の販売や相談などさまざまな事業を展開している。
 文・中村真暁/写真・佐藤哲也
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