【動画あり】紙芝居師のトランスジェンダー告白動画に反響多数「勇気をもらった」

2020年11月11日 13時00分

東京都文京区内のイベントで紙芝居を披露する三橋とらさん(本人提供)

 紙芝居発祥の地とされる東京都荒川区を拠点とする紙芝居師、はしとらさん(37)が、出生時の性別と異なる性で生きるトランスジェンダーだと、動画投稿サイト「ユーチューブ」でカミングアウト(告白)した。戸籍上は女性だが生きづらさを感じ、「女性の紙芝居師」と注目されて戸惑ったことも。性的少数者に対する差別や偏見が根強い中、「みんなが認めてくれるのが一番だけど、まだその時代ではない。だから声を上げないと」。そう、自分らしく歩み始めた。 (中村真暁)

◆同じ悩み抱えた友人が自殺

 女性であることに違和感を覚えていた三橋さんが、自身の性について自覚したのは18歳。テレビで知った「性同一性障害」の言葉をネット検索すると、当事者の記事がたくさん出てきた。「一人じゃない」。背中を丸め、体を小さくして泣いた。
 20代で頭を丸刈りにしホルモン注射も打ったが、周囲から共感されず、見下された。同じころ、トランスジェンダーの友人が生きづらさを抱えて自殺。「こんなにつらく、人を不快にさせるなら、自分らしく生きることはやめよう」。そう決意し、髪を伸ばした。自殺した友人に「世間の目を気にして女に戻ったよ、ごめんね」と心の中で語りかけた。

◆告白動画の再生数は4万回以上

 紙芝居師だった母親から受け継ぎ、9年前から紙芝居師を始めた。全国各地のイベントや祭りに参加し、メディアにも取り上げられた一方、本当の自分を隠して活動するつらさも感じた。悩みを抱えていた中、9月公開の映画「ミッドナイトスワン」(内田英治監督)で、主役の草彅剛さんが演じたトランスジェンダーの苦悩に、心が重なった。「今なら話せる」
 9月末、映画の感想とともに自分はトランスジェンダーと告白した動画を公開。これまでに4万回以上再生され、内田監督も「勇気をもらった」とツイッターに投稿した。否定的なメッセージも寄せられたが、何かがふっきれた。
 9月には、東京都足立区の白石正輝区議(79)が、同性愛が広がれば区が滅びるという趣旨の発言をした(後日に謝罪、撤回)。三橋さんはこの問題を考える動画を10月10日に配信。発言の問題点を指摘しつつ、「LGBTを理解できない人のことも考えよう」と呼び掛けた。

◆紙芝居作りに重ね「相手の気持ち受け止めよう」

 三橋さんはお年寄りから昔の暮らしや戦争体験を聞き、紙芝居を作ってきた。「出産・育児は女性、働くのは男性の仕事で、それが正義と考える時代があった。焼け野原で始まった戦後をそうやって生き抜いてきたプライドから、性の多様性を理解するのが難しい人もいる」
 性的少数者への差別的な発言は、今も至る所で聞こえる。「多様な人がいるという前提に立ち、完全に理解し合えなくても、まずは相手の気持ちを受け止めてみよう。共生するために、できることがある」。自分だからこそ伝えられるメッセージを社会に送り続ける。

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