「ごめんね」と思い続けていたけど…予期せぬ妊娠で生後5日の息子を特別養子縁組に出した女性の変化

2020年11月11日 17時00分
 予期せぬ妊娠で、初めての子を昨年10月に出産した香織さん(34)=仮名、東京都在住=は、養子縁組を仲介する民間団体を通して、子どもに恵まれない夫妻に生後5日の息子を託した。出産から1年。法的な親子ではなくなったが、養親を通して触れるわが子の成長を支えに生きている。 (今川綾音、写真も)

◆持病あり「自分では育てられない」

 性風俗の業界で働いていた香織さんが妊娠に気付いたのは昨年7月。25週に入っていて中絶できる時期はすでに過ぎていた。
 父親は分からない。持病があり、家族とは疎遠でサポートは期待できず、経済的な余裕もない。「自分ではとても育てられない」
 乳児院に預けるか、養子縁組をするか。決められずにいた8月末に切迫早産で入院。インターネットでNPO法人「Babyぽけっと」(茨城県土浦市)を知った。養子縁組を仲介・あっせんし、出産前後の妊婦の支援もする団体だ。特別養子縁組を描いた公開中の映画「朝が来る」のモデルにもなった。
 10月初め、迷いながら連絡を取った。「すごく大変だったね」というスタッフの温かい言葉に、「ここなら信頼できる」と任せることを決めた。

◆養親からの手紙や写真…胸が熱く

 予定日から8日後、緊急帝王切開で出産。3000グラム超の元気な男の子だった。生後5日間、一緒に過ごした。ミルクをあげたり、おむつを替えたり。「とても愛嬌あいきょうがある。この子なら血がつながっていなくても大事に育ててもらえる」と確信できた。

育ての親から送られた息子のアルバムや様子を知らせる手紙を、大切そうにバッグにしまう香織さん=茨城県土浦市で

 今年7月、養親との特別養子縁組が正式に成立。香織さんと法的な親子関係はなくなった。ただ、団体を通じて養親とのつながりは続いている。生後100日祝いの「お食い初め」、生後半年のハーフバースデー。節目のたびに手紙や写真で伝えられる成長。正月には祖父母らに囲まれた写真も。「愛情いっぱいに育てられている」。胸が熱くなった。

◆いつか息子に会うときのために

 妊娠が分かってから、息子に「ごめんね」ばかり言っていた。自分の手で育てられなかった息子に、一生「ごめんね」と負い目を抱えていくはずだった。でも、今は思う。「息子を託して本当によかった」
 団体は縁組する際、真実告知を条件にしている。息子が出自を知り、いつの日か「生みの親に会いたい」と思うかもしれない。
 香織さんは今年5月、心身の健康のため、昼の仕事に転職した。「あの子に会うときに元気でいたい。もうこれ以上、気持ちの面で負担を負わせたくない」。これから少しずつ、自分の生活を立て直していくつもりだ。

 特別養子縁組 子どもが、家庭で愛情をもって育てられる環境をつくるために、公的に設けられた子どもの福祉のための制度で、民法改正で1988年に開始。実親との法的関係が残る普通養子縁組と異なり、戸籍上も養父母が実親扱いとなる。養親が家庭裁判所に申し立てをしてから約6カ月の試験養育期間の後、縁組が確定すると、子どもの戸籍は実親から養親に移る。民法改正で4月から、対象年齢が6歳未満から原則15歳未満に拡大された。

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