<代替わり考 再利用>(下)大嘗宮の木材をバイオマス発電燃料にリサイクル

2020年11月12日 05時50分
 天皇代替わりで行われる皇室の最重要祭祀さいし大嘗祭だいじょうさい。会場である大嘗宮の中で主祭場の悠紀殿ゆきでん主基殿すきでん、天皇が身を清める沐浴もくよくなどをする廻立殿かいりゅうでんの3殿は「神聖清浄なもの」とみなされ、解体後の廃材も転用せず、焼却して自然に返す「焼納しょうのう」が伝統とされる。だが昨年11月の大嘗祭では、2000年に制定された建設リサイクル法の趣旨に沿い、解体材を初めてバイオマス発電燃料として再利用した。

◆設営関係費は12億円超え

 皇居・東御苑に設営された大嘗宮は550立方メートルという大量の木材を使い、解体後の可燃物は235トンに上った。宮内庁が情報開示した資料では、設営関係費として12億円を超える国費が投じられた。解体材でも民間団体への譲渡には法的な制約があるため、着工前から公共事業での活用策が検討された。
 主要3殿は古代工法で皮付き丸太材を使い、柱や梁の接続部分に釘穴やほぞ穴、溝が多数開けられる。住宅建材への再利用は「乾燥や加工が必要なため、追加経費がかかり、現実的でない」と判断された。
 公園整備工事の土留め板やウッドチップにして遊歩道の緩衝材に使う案、家具や木質ボードの材料に転用する案もあったが、「土にまみれ、人に踏まれる利用は不適切」「持ち去りや転売の防止が困難」「宗教的な付加価値が付く流用は避ける」などの理由で、いずれも採用されなかった。

◆木質チップに加工

 最終的な選択肢となったバイオマス発電は、現在の大気中の二酸化炭素(CO2)濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」の特性を持つとされる。こうした情報収集と実務は、大嘗宮の建設から解体工事まで一括受注した大手ゼネコンの清水建設が担当した。解体材は、首都圏にある産業廃棄物の中間処理業者に搬送されて燃料の木質チップに加工され、発電会社で燃やされた。
 大嘗祭が京都で行われた時代は鴨川の河川敷で解体材を焼却し、舞台が東京に移った平成の前回は宮内庁の依頼を受けた業者が焼却処分した。「今回は焼却して形を残さないという伝統の基本を守りつつ、現行法の精神にかなう方法を模索した結果だった。コストは普通の焼却処分と変わらず、熱エネルギーを社会に還元したことに意義があった」と同庁幹部は振り返る。

◆再利用に疑問の指摘も

 宗教学者には祭儀の特質に照らし、再利用に疑問を示す人もいる。皇学館大学名誉教授の櫻井治男さんは、大嘗宮の解体・処理を「儀式終了後のモノの処理ではなく、儀礼の閉じ方であって大嘗祭の儀礼のプロセスであるという理解が大切だ」と指摘。大嘗祭の今後のために「モノとしての資源の観点からではなく、文化的な資源という視点からの再検討も必要だろう」と話した。

大嘗宮の再利用 大嘗宮は今年2月に解体され、建物の象徴的な意味を持つ屋根部材と柱の一部など約300キロを焼却する「おき上げ」が、皇居・東御苑の建物跡地で行われた。解体材のほとんどはバイオマス発電燃料に利用。会場の地面に敷いた白い化粧砂利や、周囲を囲むために使用した芝垣なども再利用された。前回の平成の大嘗祭では、鳥居形の神門しんもんと神門扉の木材、砂利、芝垣などを再利用した。

(この連載は編集委員・阿部博行が担当しました)

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