「すべての国民のための大統領に」と宣言 問われる人種差別解消への政策

2020年11月12日 05時50分
<分断から融和へ バイデン氏の課題(下)>
 米大統領選で大接戦の末にバイデン前副大統領が逆転勝ちした東部ペンシルベニア州。最大都市フィラデルフィア中心街には、投開票直後から多くの支持者が繰り出し、さまざまなボードや旗を振った。とりわけ目立ったのは「ブラック・ボーツ・マター(黒人の投票も大切だ)」のサイン。黒人、女性として初の副大統領になるハリス上院議員(56)の似顔絵もあった。

7日、米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで、黒人、女性として初の副大統領となるハリス上院議員の似顔絵を掲げる支持者=杉藤貴浩撮影

◆ハリス氏登用に期待

 5月に中西部ミネソタ州で黒人男性が白人警官に首を押さえ付けられて死亡した事件以来、人種問題を巡る緊張は全米で高まったまま。バイデン氏が勝利演説で「融和」を強調したように、人種間の壁の解消は新政権の最大課題の1つだ。同氏の地元デラウェア州ウィルミントンの黒人女性ブリタニー・ジョーンズさん(29)は「こんな時だからこそ、ハリス氏が登用される意味は大きい」と期待を膨らませる。
 ただ、人種差別の解消は歴代政権も強く訴えながら果たせなかった難題だ。
 米シンクタンク「米国進歩センター」によると、2016年に現役世代の黒人世帯が持つ資産の中央値は約1万3400ドル(約140万円)で、白人のわずか9・5%。リーマン・ショック前の07年の13・7%から悪化しており、経済的側面だけ見ても融和はむしろ遠のいている。
 新型コロナウイルス問題でも、蓄えの乏しい黒人層が交通や小売り、清掃といった最前線で働き続けた結果、白人に比べ感染率や死亡率が目立って高いことが報告されている。

◆黒人だけでなく移民も

 融和が問われるのは黒人差別問題だけではない。バイデン政権には、移民を犯罪者呼ばわりし、メキシコとの国境に壁を築いたトランプ政権の政策見直しも求められる。
 「移民が市民権を取る道をしっかり確保し、国境を挟んで家族が引き裂かれるような状況をなくしてほしい」。西部アリゾナ州でバイデン氏の支持運動に参加したメキシコ移民のイメルダ・オジェダさん(35)はそう期待する。移民に活躍の場を保証し、米国社会への定着を促すことは、国全体の成長にも欠かせない。
 バイデン氏は政権移行を見据え、早くも基本政策を公表。黒人やヒスパニック系、先住民を含むマイノリティー(少数派)の問題に「今こそ対処する時だ」と宣言し、雇用や住宅取得などへの投資を拡大すると公約した。司法界出身のハリス氏には、マイノリティーが不当な暴力や取り締まりを受けやすいとされる刑事司法の改革を先導することも期待される。
 「すべての国民のための大統領になる」。勝利演説でそう誓ったバイデン氏。真価はまもなく試される。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

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