家族との面会どこまで認めるのか… コロナ禍の制限緩和に悩む介護施設  

2020年11月12日 05時50分

施設の玄関先で、3メートル離れて妻に手を振る小野春雄さん(右)=神奈川県小田原市で

 新型コロナウイルス禍が収まらない中、家族らとの面会をどこまで認めるか、高齢者福祉施設が頭を悩ませている。厚生労働省は先月、入居者の認知症予防などの目的で面会制限を緩和する方針を示したが、判断は施設任せ。感染予防から、多くの施設は緩和に踏み切れないでいる。(土屋晴康)

◆ガラス越しや3メートル離れて面会

 東京都文京区の介護付き有料老人ホーム「杜の癒しハウス文京関口」は、建物外の「窓ガラス越し面会」を認めている。会話は携帯電話を使う。柳沼亮一施設長は「都心の繁華街に近く、安全をとるか家族の対面をとるか悩ましい」と話す。6月に室内でのアクリル板越しの面会を解禁したが、都内の感染が再拡大して取りやめた。人の移動が増えている現状では再開をためらう。
 八王子市の特別養護老人ホーム「恩方ホーム」は、玄関ホールでアクリル板越しの面会を認める。予約制で1日3組まで。地域の感染状況をみて、8、9月は中止した。状況次第では再び中止もある。田中康弘施設長は「入所者の生活面は重視したいが、現時点で今以上、面会の機会を増やすことは難しい」と慎重だ。
 「オンライン面会」に限定する施設も少なくない。神奈川県綾瀬市の特別養護老人ホーム「杜の郷」もその1つ。岸本恭子施設長は「入所者の多くは持病があり、重症化しやすい。外部から人が入ってくるのは心配」と話した。当面、面会の解禁予定はないという。
 屋外での面会を認めるのは同県小田原市の特別養護老人ホーム「陽光の園」。11月5日、小野春雄さん(84)は入居する妻と、3メートルの距離を取って面会した。
 「元気そうですね」
 5分ほどだったが、2人は仲むつまじそうに互いを見つめていた。
 4月からガラス越しの面会を、7月からは屋外のほか室内での透明ビニールで作った仕切り越しの面会を認めた。箱根に近い山間部で、感染者が少ないこともあって面会機会を増やしてきた。ただし、加藤馨施設長は「家族との触れ合いは必要だが、現状でこれ以上、面会の機会を増やすことは難しい」と話した。

◆認知症の家族会「面会できる環境を」

 「認知症の人と家族の会」などが、9月に家族らに行った調査では、回答した253人のうち52%が「認知症の程度が進んだ」と答え、「オンライン面会では心身の悪化を止められない」などの声が寄せられた。同会の鈴木森夫代表理事は「認知症は生活リズムの変化で一気に悪化する恐れもある。面会できる環境を整えてほしい」と訴える。
 同会員の三橋良博さん(67)=横浜市旭区=は9月、若年性認知症を患い、介護老人保健施設にいる妻芳枝さん(68)と半年ぶりに、アクリル板越しに再会した。2月の面会禁止以降、「このままみとりの時が来るのでは」と常に不安だった。

◆「いつ、妻と触れ合える」

 芳枝さんの好きなカーペンターズの曲をかけ、声をかけると、寝たきりで言葉をしゃべれない芳枝さんが目を動かした。「以前のように抱き上げたり、肩を寄せたりしたい。いつ、妻と触れ合える日が来るのか」。5分間の面会後、寂しさとむなしさが残った。
 広島大や日本老年医学会などが6~7月に行ったオンライン調査でも、回答した医療機関・介護施設945施設の39%、ケアマネジャー751人の38%が、面会制限などの生活変化で入居者の認知症に影響が出たと答えた。
 広島大の石井伸弥教授(老年医学)は「感染状況は地域によって大きく異なり、一律の基準を当てはめるのが難しい。国だけでなく、地域ごとに医療や介護の専門家が集まり、面会緩和に向けた感染防止対策の基準を考えていくことが望ましい」と話した。

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