【独自】朝礼、訓示、休日出勤「まるで会社」 フィリピンの廃ホテルはニセ電話詐欺の拠点だった

2020年11月13日 05時50分
 フィリピンを拠点にしたニセ電話詐欺グループの36人が昨年11月に現地当局に拘束された事件で、マニラ首都圏の入管施設に収容中の30代の男が、テレビ電話などによる本紙の取材に、日本にニセ電話をかける「かけ子」たちの実態を明かした。グループは朝礼に始まり、売り上げ目標や休日出勤まであり「まるで会社のようだった」と振り返る。(井上真典)

日本人グループがニセ電話をかけていた廃ホテル=10月28日、フィリピン・マニラで(エレン・クルス通信員撮影)

 拠点はマニラ首都圏の7階建ての廃ホテル。男によると、かけ子の日本人男女が約60人いて、6、7階で電話をかけ、別の階などで寝起きした。毎日午前7時半に朝礼があり、グループ幹部の訓示を直立して聞いた。仕事は午後5時までだが、ノルマを達成できないと土曜日も働いた。

◆日本食の食堂も マニラ収容の男が明かす

 男は「月曜に幹部から週の売り上げ目標が発表される。多いときで3000万円だった」と証言。2階には日本食が出る食堂もあり、「幹部が現地人を10数人雇い、食事を作らせたり、掃除をさせていた」と話す。
 グループは「一線」「二線」「三線」と呼ばれる班に分かれ、経験の浅いかけ子は一線に入り、最初に被害者宅に電話をかけた。最寄りの警察署の署員を名乗り「詐欺グループの拠点を捜索したら、あなたの名前があった。口座から現金を引き出された可能性があるのでキャッシュカードを調べる」と言ってカードの枚数や預金残高、家族の有無を聞き出す役目を担った。
 預金が100万円以下、カード枚数が1枚などの場合は諦めて「流す」のがルール。「調べましたが、被害はありませんでした」と丁寧に電話を切った。

◆マニュアル使って2人1組で練習

 警戒心のない被害者には「金融庁や署の担当課に代わる」と伝え、かけ子経験の長い二線に交代。二線はカードや通帳を手元に持って来させ、残高などを確認する。その間に三線が日本にいるカードの受け取り役に連絡し、被害者宅に向かうよう指示していたという。
 詐欺がうまくいかないメンバーは、幹部作成のマニュアルで、被害者役と加害者役に分かれ、2人1組で練習。詐欺は「案件」と呼ばれ、「成立(成功)」すると、だまし取ったカードで引き出した金額の5%ずつが、関わったかけ子に「給料」として毎週金曜に支払われた。金額が多い場合にはボーナスも出たという。
 男はツイッターの「高収入のバイト募集」を見て応募した。「自分がばかだった。パスポートを取り上げられ、逃げられる雰囲気ではなかった」と悔やむ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で日本に帰れず、「何もすることがない。早く帰国して罪を償いたい」と話した。
 入管施設では携帯電話の利用は本来禁止だが、職員との交渉次第で使えるといい、本紙の取材に応じた。

◆18人は入管施設に1年 コロナで帰国できず

 事件では、強制送還済みの18人は実刑判決などを受けたが、警視庁がカードの窃盗容疑で逮捕状を取っている残りの18人は、新型コロナウイルスの影響で、マニラ首都圏の入管施設に留め置かれている。拘束が1年も続くのは異例。警察庁の担当者は「移送のめどは立っていない」と話す。
 フィリピン当局は昨年11月13~14日、入国管理法違反容疑で36人を拘束・収容した。今年2月、18人が日本に強制送還されたが、3月に新型コロナ感染拡大で、フィリピンが外国人の入国を原則禁止に。送還の際、日本の警察官がフィリピンに行き、飛行機に同乗するのが難しくなり、移送は止まった。
 強制送還された18人は窃盗罪で起訴された。うち16人は東京地裁で懲役2年4月~3年4月の実刑判決を受け、2人は公判中。収容中の18人は、日本で実刑判決を受けてもフィリピンでの拘束期間は、刑期に含まれない。収容中の男は「ここでは前進がない」と漏らした。

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