ごみ拾いで選挙に一石 つくば市議選 初当選・川久保さん 街宣も選挙カーもなし 「既存のやり方、変えたかった」
2020年11月13日 07時18分
街頭演説に立たず、選挙カーも使わず、ひたすら公園でごみを拾い続けた−。先月のつくば市議選で異彩を放ったのが、初挑戦で上位当選を果たした川久保皆実(みなみ)さん(34)だ。「既存のやり方を変えたかった」。従来型の選挙運動に一石を投じた新人議員の挑戦が始まる。 (林容史)
十月二十五日投開票のつくば市議選は、定数二八に四十一人が立候補する激戦。自民、共産の現職が敗れる波乱の中、川久保さんは四千二百十八票を獲得し、トップと九百九十八票差の三位で初当選した。
長男(3つ)と次男(1つ)の子育て真っ最中の川久保さんは、弁護士、ITコンサルタント会社最高経営責任者(CEO)の顔も持つ。
地元つくば市の県立竹園高校から東京大学法学部に進学し、同大法科大学院を修了。司法試験に二度目の挑戦で合格し、東京都内の弁護士事務所に入った。
人生の転機は新型コロナウイルスだった。在宅勤務が推奨され、顧客企業との打ち合わせもウェブ会議形式になった。持論のテレワークを実行し 感染リスクを避けるためにも今年七月、都内からつくば市にUターンした。
しかし、子どもを預けた市立保育所で問題にぶつかった。使用済みの紙おむつは持ち帰りが原則。三歳児から上のクラスの食事は、おかずは提供されるものの、白米は持参しなければならず、都内の保育所に比べて親の負担は大きかった。市の子育て支援制度を改革しようにも一人では難しい。「市議なら変えられるかも」。三カ月後に迫っていた市議選への立候補を決断した。
とはいえ、選挙に必要と言われる「三バン」の地盤(組織力)、看板(知名度)、カバン(資金)がない中で、人海戦術中心の選挙はやりたくてもやれない。そこで心に誓ったのが「育児と仕事は犠牲にしない」だった。
自身のホームページや会員制交流サイト(SNS)で情報発信する一方、保育所の「ママ友」たちの話に耳を傾けた。
ごみ拾いはもともと、子どもを保育所へ送る道すがらに行っていたが、告示後は自身の名前が書かれたたすきに腕を通し、時間の許す限り取り組んだ。その姿に「選挙に出ている人ですか」「ごみ拾いなんかしてて大丈夫?」などと興味を示す市民も現れた。
川久保さんを応援した「ママ友」の会社員女性(31)は「公約を実現できる人だと思った。困っている人たちの話を聞いて、動いてほしい」と期待する。
型破りの選挙運動が票になったかは分からない。川久保さんは「地元出身で東大卒の弁護士という肩書が当選につながったのでは」と冷静に分析する。それでも「四千票を超す得票が、これから選挙に挑戦する人たちの希望につながればうれしい」と笑顔を見せる。
当選の翌日から早速、「新設学校の学区割りがおかしい」「公園に花を植えたいのに蛇口が壊れていて困る」といった市民の声が届いている。
新市議の「初陣」となる十二月定例会は同月三日開会予定。川久保さんは「市民が自らの力で変えていけるまちが、いいまちになる。一番問題を分かっている当事者が声を上げた時、サポートして問題を解決していきたい」と意気込む。
関連キーワード
おすすめ情報