<評>国立劇場11月歌舞伎公演 鮮やか、仁左衛門の六助

2020年11月13日 08時02分
 国立劇場は第一部に「平家女護島(へいけにょごのしま) 俊寛(しゅんかん)」、第二部に「彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 毛谷村」と義太夫狂言が並んで、いずれも見応えのある好舞台。「俊寛」の前に「清盛館の場」、「毛谷村」の前に「杉坂墓所の場」が付いて、物語の流れを明瞭に見せるのが国立劇場らしいところ。一度歌舞伎を見てみたいと思っている方にはぜひおすすめしたい。
 「俊寛」は中村吉右衛門が平清盛と俊寛の二役。俊寛は吉右衛門の当たり役だが、一瞬一瞬の心持ちが手に取るように鋭く伝わるこれまでの演じ方と違い、終始どこか人の世を達観したような淡泊な味わいになった。幕切れの透徹した無心の表情が印象に残る。
 尾上菊之助は俊寛妻東屋(あずまや)と丹左衛門尉基康(たんざえもんのじょうもとやす)の二役。東屋に品格があり、丹左衛門はりりしく朗々としたせりふがいい。中村雀右衛門の千鳥、中村又五郎の瀬尾、中村錦之助の成経、中村吉之丞の康頼と、手揃(てぞろ)いのアンサンブルが舞台を支える。
 「毛谷村」は片岡仁左衛門の六助が見もの。大袈裟(おおげさ)なことを一切せず、衒(てら)いのない芝居の内に温かい情が舞台いっぱいに広がる。微塵弾正(みじんだんじょう)の企(たくら)みを知っての怒りから幕切れに向かって、義太夫に乗っての演技はわくわくするような楽しさと鮮やかさ。片岡孝太郎のお園は色気の薄いのが惜しいが好演で、二人での通し上演が見たいと思わせる。中村東蔵の後室お幸、坂東彌十郎の弾正。第二部には中村梅枝の古風な美しさが光る「文売り」、中村鷹之資(たかのすけ)、片岡千之助が爽やかに踊り抜く「三社祭」と清元の舞踊二番が付いて、気持ちよく劇場を後にすることができる。二十五日(十八日は休演)まで。 (矢内賢二=歌舞伎研究家)

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