ウグイス初鳴きも、タンポポ開花も…気象庁の観測「大リストラ」に批判の声

2020年11月13日 14時00分
ウグイス

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  • ウグイス
  • トノサマガエル
  • アブラゼミ(共同)
  • アブラゼミ
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 地球温暖化など長期的な気候変動の貴重な指標となり、季節の便りとしても親しまれてきた「生物季節観測」を、気象庁が今年いっぱいで大幅縮小する計画が物議を醸している。セミの初鳴き、カエルの初見しょけんなど動物の観測を全廃し、タンポポの開花など植物の大部分も廃止。残すのは桜の開花、カエデの紅葉など植物の一部だけという大リストラ方針に、気象予報士からは「乱暴ではないか」と批判が出ている。(宇佐見昭彦)

◆気象予報士・森田さんも「やりすぎでしょう」

 気象庁は観測削減の理由に、気象台周辺の都市化など「生態環境の変化」を挙げる。植物の標本木ひょうほんぼくの確保や、動物を見つけること自体が難しくなったという。
 これに対し、天気キャスターで気象予報士の森田正光さんは「動物の観測全廃は信じがたい。いくら気象庁にお金(予算)がないとしても、やり過ぎでしょう」と驚きを隠さない。「職員が目視する必要のないセミや野鳥の初鳴きなども観測困難なのか。観測できないなら、観測できなかったことを確認する。それもまた立派な観測だ」
 さらに森田さんは、クマゼミを例に挙げ「温暖化の重要な指標」と指摘する。クマゼミは主に近畿以南に生息していたが、近年は北限が関東付近まで北上したとされる。「北関東や東北地方南部でも観測種目に追加すべきではないか」

◆防災にシフトする気象庁 人員不足も

 気象庁OBで埼玉県に住む気象予報士も「理解できない。自然界を観測する役所が、自然とのつながりを軽視している。ずっと観測を続けるから分かることがある。やめたら分からなくなる」と懸念する。
 「気象庁(の上層部)はもともと生物季節観測をやめたがっていた」と話すのは、別の元職員だ。「近年は防災にシフトし、防災に直結しない業務が軽視されている。予算の事情と定員削減が背景にあり、気象台の現場では余裕がなくなっている」と嘆く。
 地方気象台で働くある現役職員は「観測をやめることで将来に禍根を残さないか、という思いに駆られるのも事実。しかし、人員削減が続く現状では、背に腹は代えられないというのも本当だ」と現場の苦悩を打ち明けた。
 気象庁の観測整備計画課は、本紙の取材に「生物季節観測の大幅削減の背景に予算や人員の事情はない」と回答。気象予報士らの批判についても「コメントする考えはない」と答えた。

 生物季節観測 1953年に全国の気象台などで開始。都市部で見られなくなった生物を除外するなどの一部見直しを経て、植物34種目(41項目)、動物23種目(24項目)の観測が続いてきた。大幅削減計画で残る植物は、桜の開花・満開、イチョウの黄葉(おうよう)・落葉、カエデの紅葉・落葉、アジサイ・梅・ススキの開花の計6種目(9項目)のみ。動物はウグイス・アブラゼミ・クマゼミの初鳴き、ツバメ・トノサマガエル、モンシロチョウ・ホタル・アキアカネ(赤トンボ)の初見などを一挙に廃止する方針。

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