<ふくしまの10年・元牛飼い2人の軌跡>(5)荒れた牧草地をソバ畑に

2020年11月14日 07時46分

ソバを収穫する長谷川健一さん。奥には除染で出た汚染土が残る=飯舘村で

 原発事故から十年近くが経過した今年十月下旬、飯舘村の元酪農家、長谷川健一さん(67)らが育てるソバ畑では収穫が最盛期を迎えていた。
 朝露が乾く午前十時ごろから日没まで、大型のコンバインで刈り取りが続く。ソバの実は妻の花子さん(66)や仲間が軽トラックでピストン輸送し、自宅の倉庫内で異物取りや乾燥の作業に追われる。
 大規模な作付けを始めて三年目。仲間四人で四十二ヘクタールという途方もない広さで栽培する。隣接する川俣町や南相馬市などでの作業請け負いも含めると五十五ヘクタールに達する。
 作付け地は、原発事故で酪農をやめたため使われなくなった牧草地や田んぼなど。村の居住者は約千五百人と事故前の四分の一まで減り、荒れた農地がどんどん増える村内で、長谷川さんらが果たす役割は大きい。
 「なりわいには全くなんねえな。農地を維持するためにやってんだ。放射能はほぼ入ってないといったって、飯舘村産ということでなかなか売れない。今年はコロナ禍でさらに厳しい。補助金がなきゃとてもやってけないよ」
 こう話す長谷川さんだが、村では、長谷川さんらのソバを乾麺や焼酎などにし、ふるさと納税などで名産品に育てていく計画が進む。「名物にするには、よほど知恵を使わねとな」(長谷川さん)。挑戦は始まったばかりだ。
 ◆ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

関連キーワード


おすすめ情報

ふくしまの10年の新着

記事一覧