ベートーベン生誕250年 こんな年だけど「歓喜」
2020年11月15日 07時15分
今年はベートーベン(1770〜1827年)の生誕250年。節目に際し、舞台やテレビの特番、CDなどスペシャルな企画が相次いでいる一方で、新型コロナ禍に見舞われさんざんな“楽聖イヤー”になってしまった。これも「運命」なのか…。いや、暮れには「第9」を聴いて「歓喜」で締めくくりたい。 (山岸利行)
◆【CD】「強い個性や主張の作品群」企画盤続々
ルートウィヒ・ベートーベンは、交響曲や協奏曲、ピアノソナタなど、数多くの作品を発表した。クラシック音楽史に輝く「楽聖」は、学校の音楽室などで見かける肖像画がなじみ深い。ウエーブのかかった髪形、右手にペン、左手に譜面を持ち、いささか険しい表情で前方を見据える。鬱屈(うっくつ)や苦悩を抱え続けた生涯だが、残した名曲は時を超えて今なお世界で愛され、親しまれている。
ユニバーサルミュージックは6月、「史上最強」と銘打って、2枚組みCD「運命〜ベスト・オブ・ベートーヴェン」=写真=を出した。「運命」「第9」「エリーゼのために」などの人気作を収めた。これとは別に「超定番30曲」も選定し、サイトで公開中。このうち、「初心者編」の10曲=別表=はベートーベンを初めて聴く際の参考になりそう。
また、今年に入って計100枚のCDを4回に分けて順次発売中で、今月18日には最後の25枚が出る。これまでに発売された中では交響曲第5番「運命」、同第6番「田園」などが売れ筋で、123枚組みの「ベートーヴェン新大全集」も好評。「くめども尽きぬ感動をもたらしてくれる」という声も届いているという。
コロナ禍で4、5月はほとんどのCDショップが営業できず、コンサートも開催されず即売もできなかった。それでも、ベートーベン関連商品の売り上げは昨年同期比(1〜9月)でほぼ横ばい。通常営業していれば「1.5〜2倍程度の売り上げになったのでは」と担当者。
ベートーベンの魅力について、担当者は「彼以前の、貴族の娯楽や教会の礼拝のために作曲された音楽と違い、強い主張や個性が作品に刻印されている。それまでの常識を発展させ、型を破って進化させてきた」と分析する。難聴も情熱で克服したベートーベンの音楽は、困難な人生に希望を与えてくれるという。
■ベートーベン10曲 初心者編
♪エリーゼのために
♪交響曲第5番「運命」
♪ピアノ・ソナタ第8番「悲愴(ひそう)」
♪交響曲第6番「田園」
♪ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
♪交響曲第7番
♪バイオリン・ソナタ第5番「春」
♪ピアノ・ソナタ第14番「月光」
♪トルコ行進曲
♪交響曲第9番「合唱付き」
※ユニバーサルミュージック「ベートーヴェン生誕250周年記念サイト『超定番30曲』」より
♪エリーゼのために
♪交響曲第5番「運命」
♪ピアノ・ソナタ第8番「悲愴(ひそう)」
♪交響曲第6番「田園」
♪ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
♪交響曲第7番
♪バイオリン・ソナタ第5番「春」
♪ピアノ・ソナタ第14番「月光」
♪トルコ行進曲
♪交響曲第9番「合唱付き」
※ユニバーサルミュージック「ベートーヴェン生誕250周年記念サイト『超定番30曲』」より
◆【舞台】表現の幅広げた「楽聖」「秘めた恋」劇に
生涯独身だったベートーベンだが、死後、机の引き出しから「不滅の恋人」に宛てた手紙が発見された。この史実を基にした舞台「Op.110 ベートーヴェン『不滅の恋人』への手紙」が十二月に上演される。音楽を担当するピアニストで作曲家の新垣(にいがき)隆(50)=写真=は「芸術としての音楽という時の原点」と敬服する。
「ベートーベンの作品を聴くと、いろいろなヒントがある。強く激しい曲から静かでデリケートな作品まで、表現の幅を広げた」と語る新垣。和音や作品の組み立て方、作り方などお手本になるという。「音楽の父」と呼ばれ、宮廷や教会で活躍したバッハ(一六八五〜一七五〇年)の作品と聴き比べると、時代背景の違いこそあるが、確かに作品の趣が異なる。
今回の公演の題名になっている「ピアノソナタ第三十一番Op.110(作品110)」。舞台では、ベートーベンと親交のあったアントニー・ブレンターノという女性にこの作品が献呈されるはずだったとして、アントニーとの恋が語られていく。この曲について「優しさ、繊細さがあって、音楽による文学的作品。固有の力を感じる」と評する。
新垣にとっての“ベスト・オブ・ベートーベン”は交響曲第五番「運命」。「人々を圧倒し、人々に訴える力を持っている」と熱い。冒頭の「ジャジャジャジャーン」はあまりにも有名だが、「全体を聴き終えた時、『あー、よかった』と思い興奮する。そんな力がある」と絶賛してやまない。
公演では、舞台中央に置かれたピアノを新垣が弾き、物語が進んでいく。十二月十一〜二十六日、東京・よみうり大手町ホールで。原案・小熊節子、演出・栗山民也、脚本・木内宏昌。出演は一路真輝、田代万里生、神尾佑(ゆう)、前田亜季ら。
サンライズプロモーション東京=(電)0570・00・3337。
■ベートーベンの生涯
1770年 ドイツ・ボンで誕生(12月16日)
82年 作品を初出版
92年 オーストリア・ウィーンへ移住
90年代後半 難聴判明1800年交響曲第1番が完成
02年 耳の養生のためウィーン郊外のハイリゲンシュタットへ
03年 交響曲第3番「英雄」完成
08年 交響曲第5番「運命」完成
18年 難聴が悪化
24年 交響曲第9番「合唱付き」完成
27年 死去(3月26日)、享年56
※出生の日は推定
1770年 ドイツ・ボンで誕生(12月16日)
82年 作品を初出版
92年 オーストリア・ウィーンへ移住
90年代後半 難聴判明1800年交響曲第1番が完成
02年 耳の養生のためウィーン郊外のハイリゲンシュタットへ
03年 交響曲第3番「英雄」完成
08年 交響曲第5番「運命」完成
18年 難聴が悪化
24年 交響曲第9番「合唱付き」完成
27年 死去(3月26日)、享年56
※出生の日は推定
◆【NHK】各地のオケが名曲リレー
苦しみを乗り越え、喜びへ-歓喜への扉を開こう! NHKは「ベートーベン250」プロジェクトとして、年末までテレビやラジオのさまざまな番組を放送している。
総合土曜午後二時五十分などの「名曲アルバム」、Eテレ金曜午後九時の「ららら♪クラシック」(再放送あり)といったおなじみの番組に加え、「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」と題した企画では、全国各地のオーケストラがベートーベンの名曲を演奏してつないでいて、その模様は「クラシック音楽館」(Eテレ日曜午後九時)で放送されている。今後は十五日に交響曲第五番(山形交響楽団)、同第六番(大阪フィルハーモニー交響楽団)ほか。二十二日は同第七番(名古屋フィルハーモニー交響楽団)、同第八番(札幌交響楽団)ほか。
また、プロジェクトの一環として「あなたが選ぶベートーベン・ベスト10」の投票を十六日までNHKの公式サイトで受け付けている。投票結果は十二月の「ららら-」などで発表する。同二十日の「プレミアムシアター」(BSプレミアム)では、サイモン・ラトル指揮、ロンドン交響楽団による「交響曲第九番」も放送予定。
プロジェクトのアンバサダーを務める稲垣吾郎=写真=はベートーベンについて「激しさや怖さといったイメージが強く、ちょっと受け止めきれないと感じる部分もありました」としながら、「いろんな苦労を乗り越えて音楽を突き詰めていく生き方、人間性、その音楽が受け継がれているという歴史に触れることで、ベートーベンにもっと興味がわいてきました」とコメントしている。
関連キーワード
PR情報