日テレ跡地に超高層ビル計画 名門女子校が異議 「ここは赤坂じゃない」

2020年11月18日 06時00分

施設の解体工事が進む日本テレビ本社跡地。中央の白い建物が、再開発用地にいち早く建設された高さ59.9メートルの「番町スタジオ」。奥にあるのが女子学院校舎=東京都千代田区で、本社ヘリ「おおづる」から(芹沢純生撮影)

 この町に必要なのは「にぎわい」か「静寂」か。東京都心でも屈指の高級住宅街として知られる番町地区(千代田区)で、日本テレビが本社跡地に計画した超高層開発の是非を巡る住民を二分した論争が起きている。地域の顔となってきた名門女子校も声を上げた。(浅田晃弘)

◆60メートルの高さ制限を見直しか

 「ここは(TBSが再開発した)赤坂のような繁華街ではありませんよ」。2003年まで日テレ本社があった二番町の所有地に校舎が隣接する、女子学院中学・高校(一番町)の本田真也事務長は訴える。
 東京の「女子校ご三家」に数えられる女子学院のみならず、明治以来の文教地域として歴史を刻む番町には名門校が多い。本田さんは「再開発で人が増え、登下校中の子どもたちに何か起きては」と心配する。

番町 江戸時代初期、甲州街道の東端にあたる江戸城西側で、要所防衛にあたる「大番組」と呼ばれた旗本たちの屋敷が集められたことが由来。一番町から六番町まである。明治時代、旗本屋敷の跡地に華族や官僚、政治家が移り住み、高級住宅街となる。歌人夫妻の与謝野鉄幹・晶子、作家の島崎藤村、泉鏡花、画家の藤田嗣治らの旧居跡が集まる日テレ本社跡地沿いの道は「番町文人通り」と名付けられている。

 都市計画法に基づき、区が08年に決定した地区計画で二番町は「落ち着いた街並みと良好な住環境の維持を図る」とされ、60メートルの高さ制限がかけられた。一般的に60メートルを超える高さの建築物を「超高層」と呼ぶ。60メートルの高さ制限は番町地区に広く及んでいる。一帯は都心部では珍しい「超高層空白地帯」だ。
 区は、自治体のまちづくり計画の最上位に位置づけられる「都市計画マスタープラン」を本年度中に改定する。20年ぶりの改定作業が大詰めとなり、女子学院は、大妻中学高校(三番町)、雙葉中学・高校(六番町)と3校連名で先月、番町に超高層ビルが建てられるようになる改定はしないよう求める要望書を、区に提出した。

◆町会長は「念願の広場ができるなら」

 再開発計画は17年、番町地区の町会長や通称「日本テレビ通り」沿いの商業関係者らで結成した勉強会が「まちづくり方針案」をまとめたことで加速した。日テレにイベント会場になる広場を整備してもらう代わりに、規制緩和を図り、超高層ビルの建設を可能とする内容だった。
 五番町町会長の横山義文さん(63)は「住民交流や防災に役立つ広場は念願だった。実現してくれるなら、企業の利益にも配慮しようとなった」と振り返る。
 具体化に向け、勉強会のメンバーに区と日テレが加わった「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」が18年に発足。日テレが示した資料に新たに求める高さ制限について「最大150メートル」とあり、騒動となった。景観や住環境の悪化を心配する住民が「番町の町並みを守る会」を結成した。

◆「落ち着いた町が変わるのは不安」

 「守る会」共同代表で、日本芸術文化振興会前理事長の茂木七左衛門さん(82)は「日テレは町会長レベルの人たちに話していただけで、それ以外の住民は何も聞いていなかった」と合意形成が不十分だと指摘する。「大勢の子どもが通学し、年配者が安心して暮らせる落ち着いた町が変わることに不安は大きい」
 日本テレビ番町再開発事務局の担当者は「(150メートルは)諸制度を活用した高さの上限として示した。そこまでの計画は考えていない」とした上で「地域要望を実現し、コンセプトのしっかりした施設を造るためには、現在の制限下では難しい。まちに対するみなさんの意見を聞きながら検討を続けたい」としている。

大沢昭彦・高崎経済大学地域政策学部准教授(都市計画)の話 「広場」と「にぎわい」だけでは、良好な住環境を守るため地域が共有していたルールを変更する理由には乏しい。建物のボリュームを増やせば利益になるというのは成長社会が前提だ。これからは働きやすさや環境に配慮した質の高い空間をつくり、面積あたりの価値を向上させることが求められる。高層化に頼らない、事業者の発想の転換が必要だろう。

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