冬場の“被災 防寒”備えを 寝床や車内 衣類など身近に

2020年11月18日 07時28分
 もし冬場に地震が起きれば、建物の倒壊や津波に加え、寒さが命取りになりかねない。二〇一一年三月に発生した東日本大震災の被災地では、低体温症で亡くなる人も少なくなかった。新型コロナウイルスへの警戒が続く中、避難所では換気の徹底が求められることもあり、一層の防寒対策が必要だ。日頃から肌着やダウンジャケットなどをすぐに持ち出せるように準備しておきたい。 (細川暁子)
 「災害時に電気やガスなどのライフラインが途絶えた中で低体温症になれば、体を温めることができず救命は難しい」と強調するのは、東北大病院総合地域医療教育支援部助教の内科医、菅野武さん(41)だ。
 菅野さんは東日本大震災当時、津波で多くの犠牲者が出た宮城県南三陸町の旧・公立志津川病院に勤務していた。海岸から約四百メートルにあった病院は地震発生から約四十分後の午後三時半ごろ、津波に襲われ、高さ約十五メートルの四階天井付近まで水が到達。一階の自家発電機も水没して電気、水道が途絶えた。
 高齢者中心の入院患者約百人のうち、約四十人が津波を逃れ、最上階の五階会議室に避難。中には四階に取り残され、菅野さんらがシーツにくるんで救出した患者もいた。五階に医療設備はなく、スタッフはその場にあった段ボールの上に患者を寝かせ、津波でぬれた服を脱がせてタオルで体を拭いた。新聞紙をかぶせたり、カーテンでくるんだりもして体を温めたという。外には雪がちらつき、翌日午後に救出ヘリが着くまでに、七人の患者が低体温症などで亡くなった。
 低体温症は、体の内部の「深部体温」が三五度以下になり、内臓機能を維持できなくなる。平常時なら患者を電気毛布でくるんだり、温めた点滴を打ったりして治療できるが、災害で電気やガス、暖房が使えなくなった場合、重症になると助ける方法がないという。
 「低体温症にならないための対策が何より重要」と菅野さん。重ね着できるよう厚手の靴下や肌着数枚と、コンパクトにたためるダウンジャケットやタオル、毛布などを袋にまとめ、すぐ持ち出せるよう寝床に置いておくことを呼び掛ける。今は大勢が集まる避難所を避け、車中泊することも想定される。「車に毛布や衣類を積んでおくのも対策の一つ」とアドバイスする。
 被災者支援をしているNPO法人レスキューストックヤード(名古屋市)会員の椿佳代さん(65)は、避難時にあると便利な防寒グッズに、巻きスカートを挙げる。毛布やマットの代わりになり、着替えの目隠しにも使える。新聞紙やラップ、ごみ袋も重宝する。新聞を体に巻き、その上からラップを巻き付けたり、丸めた新聞をごみ袋に詰めて足を入れたりすれば、保温効果があるという。

◆1泊体験 体が悲鳴

 記者(40)は先月末、1泊2日で避難生活を体験する「中日サバイバルキャンプ」(中日新聞社主催)に参加した。屋外で段ボール製のシェルター=写真=に入って寝てみたが、一晩だけで体調を崩してしまった。
 会場の愛知県豊川市役所の駐車場に、段ボールをつなぎ合わせたシェルターを設置。服の上にダウンコートを着て、毛布にくるまり就寝した。深夜には気温が10度を下回り、寒さや地面の硬さ、車の騒音が苦痛で一睡もできなかった。
 翌日は腰痛や肩こりがひどく、頭痛と吐き気に襲われた。生理中だったことに加え、寝不足と体の冷えが体調不良に拍車をかけた。同行していた看護師に鎮痛薬をもらい持ち直したものの、常備薬を持ち歩く大切さを痛感。背中や腰の痛みを和らげるために、体の下に敷ける毛布や寝袋も必要だと思った。

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