<特派員の眼>韓国で繰り返される「政治報復」 存命中の元大統領4人、全員の実刑が確定

2020年11月18日 11時30分

2018年9月、収賄罪などに問われソウル中央地裁で開かれた裁判に出廷した、李明博元大統領(右)=AP

 財閥からの巨額収賄罪などに問われた韓国の李明博イミョンバク元大統領の実刑判決が先月29日、確定した。韓国の大統領経験者で実刑となったのは、全斗煥チョンドファン盧泰愚ノテウ朴槿恵パククネの各氏に次いで4人目。存命中で実刑になっていないのは、現職の文在寅ムンジェイン氏だけという異例の事態になっている。

◆22年政権交代なら文在寅氏も?

 その背景として指摘されるのが、韓国の政治風土から生まれた「政治報復」だ。1970年代から南東部・慶尚道キョンサンドを支持基盤とする保守派と、南西部・全羅道チョルラドが地盤の革新系が激しく対立。南北対立になぞらえて「南南葛藤」と呼ばれ、政権が代わるたびに、旧政権を徹底的に否定する政治が行われてきた。
 朴氏の弾劾によって誕生した文政権も「積弊清算」を掲げ、保守派を厳しく断罪。李氏は、文氏の大統領就任から10カ月後の2018年3月に逮捕されたが、「文政権の発足当初から予想されていたことだ」と韓国紙の政治部記者は話す。
 李政権下の09年、盧武鉉ノムヒョン元大統領が不正資金疑惑で検察の厳しい追及を受け、自殺した。弁護士時代にともに働き、大統領になった盧氏を側近として支えたのが、文氏。政権の意向を酌んだ検察による李氏への捜査は、その「政治報復」とみられている。
 実刑確定後、「法治が崩れた。国の未来が心配だ」とのコメントを出した李氏は、公判の中では政治報復について「今回が最後になることを望む」と述べた。しかし、保守派は文政権への反発を強めており、22年の次期大統領選挙で政権交代となれば、今度は文氏が標的になる可能性も捨てきれない。

◆国民は冷ややか「保守と革新の対立にうんざり」

 今年は民主化が実現するきっかけとなった1980年の光州事件から40年。軍事政権が武力で市民のデモを制圧した事件の火種となったのは、光州市民が抱く保守派への強い反発心だった。今なお根深く残る社会の分断。
 「われわれが追い求めた民主主義は道半ばだ。多様な意見があるのは当たり前だ。互いに認め合い、この国はもっと成熟しなければならない」。事件40年の取材で、当時現場にいた男性はそう語っていた。
 本来は革新系を支持しているというソウルの30代男性は言う。「文在寅政権になって政治は変わると期待したが、何も変わっていない。保守と革新の対立にもうんざりしている」。繰り返される政治報復を、韓国国民は冷めた目で見ている。(ソウル支局・中村彰宏)

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