育児、介護、手術乗り越え最年長タイトルへ 将棋の中井女流六段51歳で倉敷藤花戦に挑戦中

2020年11月18日 12時00分

13年ぶりのタイトル戦で、里見香奈倉敷藤花(右)に挑む中井広恵女流六段(左)=大阪市の関西将棋会館で(日本将棋連盟提供)

 将棋の中井広恵女流六段(51)が、史上最年長で女流タイトル戦の「倉敷藤花くらしきとうか戦」三番勝負に挑んでいる。タイトル獲得通算19期を誇る大ベテランだが、育児や介護などに追われ、この13年間は大舞台から遠ざかっていた。「女性が家庭を持ってどこまで戦えるか、後輩たちも気にしている。自分がお手本になるつもりはないが、一つの道筋を見せられたら」と意気込みを語る。(樋口薫)

◆「後輩に筋道見せたい」

 「年齢的に、もう厳しいと感じていた」という51歳4カ月でのタイトル挑戦。清水市代女流七段(51)が一昨年に達成した49歳9カ月を抜き、女流棋士では最年長記録となった。女性初の50代でのタイトル獲得に向け、立ちふさがるのは、女流王位など四冠を持つ第一人者の里見香奈倉敷藤花(28)。今月5日の開幕局では惜敗し、もう1敗もできなくなった。
 1981年、11歳で北海道稚内市の実家を離れ、故佐瀬勇次名誉九段の千葉市の自宅に住み込む内弟子となり、女流棋士デビュー。男性と同じ棋士を目指す「奨励会」にも所属しつつ、83年には、現在も史上最年少記録の13歳9カ月で女流王将に挑戦した。この時は敗退したが、86年、女流名人位戦で林葉直子女流名人(当時)を下し、16歳で初タイトル。以後、女流名人は9期獲得し、クイーン名人の称号を得ている。さらに女流王位3期、女流王将4期、倉敷藤花3期を次々と獲得し、2007年までタイトル戦常連のトップ女流棋士として活躍してきた。この間、20歳で兄弟子の植山悦行七段(63)と結婚。3人の娘を育ててきた。

◆コロナ禍で「ゆっくり将棋に向き合えた」

史上最年長で女流タイトル戦に挑戦している中井広恵女流六段 =東京都千代田区内幸町の東京新聞で(市川和宏撮影)

 他方、07年には女流棋士の地位向上を目指し、日本女子プロ将棋協会(LPSA)の代表理事に就任。14年からは組織に所属しないフリー棋士となった。「自分で仕事を見つけてこないといけない」という苦労や、義母の介護もあって大舞台は遠のいた。一昨年には持病の座骨神経痛の手術も経験。「対局中、ずっと正座しているのはつらい状態」という。
 それでも再び立ち上がれたのは、くしくもコロナ禍がきっかけだった。「外に出られない時期、ゆっくり将棋と向き合うことができた」。以前から、AI(人工知能)を用いた研究にも積極的に取り組んでいる。「常識を覆すような手を示され、自分の直感が信じられなくなってきた」と笑うが、新たな感覚を取り入れる努力も実を結んだ。

◆崖っぷちの第2局は21日、岡山・倉敷で

 将棋界では、若き藤井聡太王位(18)=棋聖=が旋風を巻き起こす一方で、ベテランの活躍も目立つ。同年代の羽生善治九段(50)は現在、前人未到のタイトル100期を目指し、竜王戦七番勝負に挑戦中だ。中でも弟弟子の木村一基九段(47)が昨年、史上最年長で初タイトルの王位を獲得した活躍は励みになったという。
 「SNSでも、皆さんから温かい言葉をかけてもらった。自分らしい将棋で期待に応えたい」。巻き返しを狙う第2局は21日、岡山県倉敷市で指される。

 将棋の女流タイトル戦 「女流棋士」は、男性しか合格者が出ていない「棋士」とは異なるプロ制度。白玲戦・女流順位戦が今年新設され、清麗戦、マイナビ女子オープン、女流王座戦、女流名人戦、女流王位戦(本紙主催)、女流王将戦、倉敷藤花戦の全8タイトル制となった。現在は里見香奈女流王位と、奨励会で棋士を目指す西山朋佳三段がタイトルを分け合っている。

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